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主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

2023年5月29日 北朝鮮が日朝交渉再開の可能性を示唆か

 

 朝鮮中央通信は、本日付け朴常吉外務省副相(次官)の談話を報道した。その骨子は、つぎのとおりである。

  • 岸田首相が「前提のない日朝首脳会談」を繰り返し訴えていることは承知しているが、「彼がこれを通じて実際に何を得ようとするのか見当がつかない」
  • 「先行の政権の方式で実現不可能な欲望を解決してみようと試みるのなら、それは誤算であり、無駄な時間の浪費になる」
  • 「もし、日本が過去に縛られず、変化した国際的流れと時代にふさわしく相手をありのまま認める大局的姿勢で新しい決断を下し、関係改善の活路を模索しようとするなら、朝日両国が互いに会えない理由がない」

 同談話は、岸田首相が27日、「朝日首脳会談の早期実現のために高位級協議を行おうとする意思を明らかにした」ことを受けてのものである。

 内容的には、「すでに解決済みの拉致問題とわが国家の自衛権について何らかの問題解決をうんぬんし、朝日関係改善の前提条件として持ち出している」ことを非難し、「新しい決断」を求めるなど、従前の主張の延長線上に立つものである。

 しかし、そうした条件付きであっても、外務次官が(研究所研究員とかではなく)、岸田首相の発言に機敏に対応して、「朝日両国が互いに会えない理由がない」ことを積極的に表明する談話を発表したことは、これまでの「日本相手にせず」的な姿勢とは明らかに異なるものと言える。

 今、何故、北朝鮮がそうした姿勢を打ち出したのか、米韓との関係が膠着する中での突破口を模索するものなのか、あるいは、日朝間における水面下での何らかの接触の結果であるのか、にわかに断じがたいが、いずれにせよ、極めて注目すべき動向といえよう。日本側にも、この機会を活用すべく、機敏かつ賢明な対応を大いに期待したい。