rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

2024年3月25日 金予正がまたも対日関連談話を発表

 

 本日、朝鮮中央通信は、金正恩党中央委副部長名義の談話(同日付け)を報道した。その骨子は、次のとおりである。

  • 「最近も岸田首相は、(以前とは)また別の経路を通じて可能な限り早いうちに朝鮮民主主義人民共和国国務委員長に直接会いたいという意向を我々に伝えてきた」が、「単に首脳会談に乗り出すという心構えだけでは不信と誤解でいっぱいになった両国関係を解決することができない」
  • 「日本が今のように我々の主権的権利の行使に干渉しようとし、・・拉致問題に依然として没頭するなら首相の構想が人気取りにすぎないという評判を避けられなくなる」
  • 「心から日本が両国関係を解決し、我々の親しい隣国になって地域の平和と安定を保障することに寄与したいなら、自国の全般利益に合致する戦略的選択をする政治的勇断を下すことが必要である」

 この談話冒頭でも述べているが、金予正は、去る2月15日にも談話を発し、岸田総理の国会発言に絡める形で「朝日首脳会談」の前提などについての立場を示していた。

 今次談話でも、それに関する主張に特段の変化はみられないが、注目されるのは、岸田総理が「また別の経路を通じて・・(金正恩に)会いたいという意向を我々に伝えてきた」ことを明らかにした点である。

 その事実関係については、私は知る由もないが、こうした談話が発出されたことから推測しても、まったくの事実無根ではないのであろう。そして、今次談話は、そうした「意向」に対する回答の性格を帯びたものであろう。

 換言すると、北朝鮮側としては、このたび用いられた「また別の経路」に対し、十分な意思疎通が可能とは認識していないし、おそらくは、そうした経路を通じた「意向」伝達に対しては、さほどの好感を抱いていないのであろう。仮に、その「経路」を通じた交渉を望むのであれば、こうした形で敢えて公表することのではなく、それを通じて北朝鮮の意向を打ち返せばよいと考えられるからである。そうではなく敢えてこうした「談話」の形で回答したということは、端的に言えば、顔を洗って出直してこいというメッセージと言わざるを得ないように思われる。