rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

2024年3月29日 駐中大使、外相が対日交渉拒絶の姿勢を相次いで公表(30日修正版)

 

 本日、朝鮮中央通信は、日本との外交接触・交渉を拒絶する旨の李龍男駐中大使の「立場発表」なるもの及び崔善姫外相の談話を相次いで報道した。それらの状況は、次のとおりである。

ア 李龍男駐中朝鮮大使、「日本側が接触を提起してきたことに関連する立場発表」(全文)

  • 「28日、中国駐在日本大使館関係者は、朝鮮大使館参事にEメールで接触を提起してきた。我々は、日本側と会うことがない。私は、朝鮮民主主義人民共和国が日本側といかなるレベルでも会うことがないという立場を再度明白にする。」

イ 崔善姫外務相談話(骨子)

  • 「日本の岸田首相が「拉致問題」にまたもや言及し、朝日間の諸懸案解決のために従来の方針の下、引き続き努力を続けるという立場を明らかにした」
  • 「我々は、日本が言ういわゆる『拉致問題』に関連して解決してやることもないばかりか、努力する義務もなく、またそのような意思も全くない」
  • 「朝日対話は我々の関心事ではなく、我々は日本のいかなる接触の試みに対しても許さないであろう・・日本が我々の主権行使を妨害し、干渉することに対しては常に断固と対応する」

 このうち崔外相の談話は、岸田総理が28日の記者会見で「日朝が成果を出す関係の実現は双方の利益に合致する」などと述べたことを受けてのものと考えられる。

 本ブログで紹介したとおり、日朝交渉に関しては、既に金予正名義の談話が25,26日と相次いで発出されており、その上で本日の駐中大使の「立場発表」、更には外相談話と続き、いかにもバタバタとした動きが感じられる。

 本当に関心がないのなら、繰り返し「無関心」を表明する必要もないわけで、こうした一連の動きの背景には、何らかの思惑ないし事情が存在するのであろう。まったくの推測であるが、北朝鮮の内部的な事情が作用して(あるいは中国への配慮?)、外交部門が対日強硬姿勢を敢えて誇示する必要が生じているのかもしれない。

 いずれにせよ、ここまで言い切った以上、当面、公式的な日朝交渉の実現は困難であろう。