rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

2024年1月19日 政府代表団のロシア訪問終了を報道

 

 本日の「労働新聞」は、崔善姫外相を団長とする標記代表団が1月18日、ロシア公式訪問を終え帰国したことを報じる朝鮮中央通信の記事を掲載した。北朝鮮メディアにより報じられた同代表団の主な日程は、次のとおりである。

1月14日

  • 平壌出発:「ラブロフ同志の招請により・・公式訪問」、北朝鮮駐在ロシア代理大使、武官が見送り(同日、モスクワ到着も報道)

1月15日

  • 無名戦士の墓に花輪贈呈:「ファシズムを撃滅するための聖戦で犠牲となった軍人たちを追慕し黙想した」

1月16日

  • 両国外務相間の会談を実施:「経済、文化など各分野での双務交流と協力事業を積極的に推進していく上で両国対外政策機関間の戦略戦術的協働を強化することについての問題を具体的に討議した」「朝鮮半島東北アジア地域情勢をはじめとした諸地域及び国際問題において共同行動を積極化するための深度ある意見交換を行い、見解一致をみた」、「会談は温かく同志的な雰囲気の中で行われた」
  • 崔善姫外相がプーチン大統領儀礼訪問プーチン大統領金正恩の「温かいあいさつ」を伝達。「戦略的で伝統的な朝ロ親善関係の新たな全盛期を開き共同の繁栄と発展を成し遂げようとの両国人民の強烈な念願に符合するよう全般的な双務関係の力動的な発展を推動し、地域と世界の平和と安全保障のための共同歩調と相互協働を緊密にしていこうとの双方の立場が再確認された」、「終始親善の情あふれる和気あいあいとした雰囲気の中で進行」

1月17日

  • 崔善姫外相がノバク・ロシア副首相と談話:ロシア運輸相が同席。「朝露友好・協力関係が新たな戦略的高さに上がったことに応じて貿易、経済など各分野での双務交流と協力活動を活性化し、拡大していくための実践的問題が討議された」、「友好的で温かい雰囲気の中で行われた」

1月18日:平壌に帰着

 なお、上記の外相間会談、プーチン大統領儀礼訪問などには駐朝ロシア大使が同席しており、同外相の訪問にあわせて同大使が帰国していたとみられる。このことからも、ロシア側がこの訪問を重視していたことがうかがえる。ちなみに、日本のあるテレビ番組に出演した「情報ジャーナリスト」が「(代表団に)同行した」と述べた駐朝ロシア武官は一行の平壌出発・到着時にそれぞれ見送り・出迎えをしたことが報じられている。誤解であろう。

 更に注目されるのは、これら動向を伝えるニュース映像で崔外相一行の中に党秘書兼軍需工業部長である趙春竜(先の中央委全員会議で政治局候補委員から委員に補選)の姿があることである。崔外相は政治局委員候補であるので、趙春竜は、格下の団長の下、名前も報じられないまま同行したことになり、実に不自然な動向と言える。ただ、このことについては、軍需部門の交流に脚光があたらないようにするためのカモフラージュと解釈できる一方、あえて、それを「隠して見せる」ことにより、猜疑心・不安感を喚起しようとの狙いとも考えられる。どちらかと言えば、後者の可能性が高いように思える。本当に隠したいのであれば、マスコミの前に姿を現すことはないのではないだろうか。

 そういう目でみると、会談等の内容に関する表現も抽象的であり、実際的なことが合意されたかのようでもあり、その「意向」が示されただけのようでもあり、曖昧模糊としている。朝ロ関係については、今しばらく予断を排してしっかりと見極めていく必要があろう。