rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

2024年1月20日 国防省代弁人談話を発表、「水中核武器体系・ヘイル5-23」の「重要実験」実施を主張

 

 朝鮮中央通信は、1月19日、国防省代弁人が同日、「無謀な軍事的対決狂気を絶対に黙認しない」と題する談話を発表したことを報じた(19,20日付け「労働新聞」には非掲載)。同談話の骨子は、次のとおりである。

  • 「去る1月15日から3日間、・・(米・日・韓の)海軍艦船は済州島周辺の海上で連合海上訓練をまたもや強行した」
  • 「これに対する対応措置として、朝鮮民主主義人民共和国国防科学院水中武器体系研究所は、開発中の水中核武器体系『ヘイル(津波)―5―23』の重要試験を朝鮮東海水域で実施した」
  • 「共和国武力は、敵の無謀な軍事的対決狂気を絶対に黙認せず、責任的かつ迅速果敢な抑止力行使で敵に恐れを与え、強力な力に頼って国家の安全と地域の平和をしっかり守っていく」

 同談話は、当該「重要試験」の実施期日や具体的内容については、一切、言及していない。しかし、15日から3日間実施された米日韓の軍事演習への「対応措置」として実施したということであるから、早くて16日以降、18日までの間に実施したことになる。

 いずれにせよ、今次試験実施の狙いは、当該兵器の開発上の必要に即したものというよりは、「敵の無謀な軍事的対決狂気を絶対に黙認せず、責任的かつ迅速果敢な抑止力行使で敵に恐れを与え」るとの姿勢を改めて誇示するという宣伝的なものであったと考えられる。つまり、敵が海上武力を誇示するなら、自分たちもそれに関する威力を示したい(しかし、それに足る海上戦力は保有していない)ので、せめての措置として「重要試験」実施を発表したのであろう。「目には目、歯には歯」を実践しているともいえる。

 なお、北朝鮮は、従前「ヘイル」関連の航行試験について、「ヘイル」を昨年3月21~23日に(航行時間59時間12分)、「ヘイルー1」を3月25~27日に(同41時間27分、航行距離約600㎞)、「ヘイルー2」を4月4~7日に(同71時間6分、同約1,000㎞)、それぞれ実施したと主張している。

 今次発表の「ヘイル―5―23」との名称からは、同兵器の開発が進展していることを印象つけようとの思惑もうかがえる。しかし、技術的に大きな進展があれば、それを誇示しても良いと思われることから、実際のところは、試行錯誤を繰り返している過程(そのために形式を示す番号が増えている)とも考えられる。