2024年11月1日 金正恩「指導」下の最新型ICBM「火星砲―19」型試射成功を大きく報道(加筆、2日 修正版・太字部分)
本日の「労働新聞」は、昨日の標記ミサイル試射に関し、「朝鮮民主主義人民共和国の徹底した対応意志と戦略攻撃力の絶対的優勢を誇示した重要な試験 敬愛する金正恩同志の指導下、朝鮮民主主義人民共和国の最新型大陸間弾道ミサイル『火星砲―19』型試験発射を成功裏に断行」との見出しを付して、昨日の朝鮮中央通信報道を超える詳細な記事を多数の写真と共に掲載した。その骨子は、次のとおりである。
- 背景環境:「共和国の最も敵対的な敵が核同盟に進化し、最近、史上最大、歴代最高を記録している米帝と韓国かいらいのヒステリックな武力増強と挑発企図、共和国政権を標的にして時を構わず吐かれる威嚇的な妄言は、わが国家の主権と安全環境に重大な危害を加えており、わが軍と人民の耐えがたい憤怒と報復意志を触発させている」、「米国と追随の群れの侵略的性格の冒険主義的な軍事的しゅん動から国家の安全と地域の平和をしっかり守るための戦略的選択とその強力な実行の切迫性がさらに浮き彫りになっている時期」
- 金正恩指導状況:「最新型大陸間弾道ミサイル(ICBM)「火星砲―19」型の試射を断行することに関する命令をミサイル総局に下達し、10月31日の朝、共和国戦略武力の絶対的優勢を永久化する上で画期的な里程標を立てる重要な試験を現地で直接指導した」、「直接発射場へ出向いて戦略兵器試射の準備状況と計画を確認し、中央指揮監視所を占めた」
- 発射状況:「金正恩総書記が、最新型戦略兵器の試射を承認すると、ミサイル総局長の張昌河大将は栄誉の第2赤旗中隊に発射命令を下達した」、「ミサイルは、最大頂点高度7687.5キロまで上昇し、距離1001.2キロを5156秒間飛行して朝鮮東海の公海上の予定目標水域に着弾した」
- 新型ミサイルの位置づけ:「党大会が示した国家核戦力建設展望計画に従って、共和国戦略武力が「火星砲―18」型と共に運用する最終完結版の大陸間弾道ミサイル「火星砲―19」型兵器体系は、朝鮮民主主義人民共和国を防御し、侵略行為を確固と抑止し、国家の安全をしっかり守る上で第一の中核主力手段」
- 金正恩発言:「今回の発射は、最近、意図的に地域情勢を激化させ、共和国の安全を脅かしてきた敵にわれわれの対応意志を示すのに全的に合致する適切な軍事活動であり、またわが国家の戦略攻撃武力を絶えず高度化する道程で必須の工程」、「核戦力強化路線をいかなる場合にも絶対に変えないということを再三明白に確言」、「敵を治め、抑止する強力な力で守る平和だけが信頼することができ、安全で強固な平和であり、それにわが国家と人民の安泰と未来に対する確実な保証があると再び強調し、そのための国家核戦力強化路線の貫徹において国防科学部門が恒久的に堅持すべき綱領的課題を宣明」
以下、加筆
同記事の添付写真には、「火星砲19」と称する新型ミサイルの発射・飛翔状況(1~3段ロケット分離を含む)や昨日の本ブログでも言及した11軸(「12軸と推定される」と記したが、朝鮮中央テレビの映像から11軸と判明)の新型TELのほか、記事中には言及のない「娘」が金正恩の傍らで発射を見守る姿なども写しだされている。
また、記事中の新型ミサイルの飛行諸元(最高高度、飛行時間)などは、日韓当局の発表とも概ね符合するものであり、北朝鮮が従前以上の射程そしておそらくは従前以上の積載量を持つ新型ICBMの開発に成功したことは間違いないと言えよう。
今次発射の狙いについては、一般には、米国大統領選挙を視野に入れたものとの見方が有力であるが、私としては、そうした側面はまったくの否定はできないにせよ、新型ミサイルの開発が完了したことを受けての試射の必要性という技術的側面がなによりも重要であり、対外的アピールという面では、むしろ先の「無人機」への反発が直接の契機になっているのではないかと考える。
いずれにせよ、そうした新型ミサイルの開発は、既に開発・保有済みの「火星18」が米国本土の大半を射程に収めていたとするなら(南米の国との戦争を想定しているわけではないのだから)、それ以上の射程延伸が戦略的に見て、どのような実際的効用をもたらすのか疑問なしとせず、開発のための開発(つまりは、自己満足ないし内外に対するアピールが主眼)という印象を禁じ得ない。