rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

2025年2月8日 金正恩朝鮮人民軍創建節に際して国防省を祝賀訪問

 

 本日の「労働新聞」は、金正恩が、2月8日、朝鮮人民軍創建節に際して国防省を祝賀訪問し、演説を行ったことなどを報じる記事を掲載した。その骨子は、次のとおりである。

ア 祝賀訪問の概況

  • 迎接者:努光鉄(国防相)、鄭慶沢(総政治局長)、李永吉(総参謀長)をはじめとする「国防省主要指揮官と朝鮮人民軍大連合部隊の軍・政幹部たち」
  • 主要動向:①迎接儀式(儀仗隊、軍旗査閲、分列行進)、②金正恩演説(屋内にて「国防省朝鮮人民軍の各級軍・政指揮官たち対象。注目点後述)、③記念写真撮影(屋外。「国防省指揮官たちと直属区分隊軍人たち、朝鮮人民軍軍種・各級大連合部隊と管下連合部隊、部隊の軍・政指揮官たちと共に」。添付の記念写真は6葉)

イ 金正恩演説の注目点

  • 情勢認識等:「朝鮮半島地域に常時展開されている米国の核戦略手段と実戦水準で繰り広げられる米国主導の二国および多国的な核戦争模擬演習、米国の地域軍事ブロックシナリオに従って構築された米・日・韓3国軍事同盟体制とそれを基軸とするアジア版NATOの形成朝鮮半島と北東アジア地域での軍事的不均衡を招き、新しい激突構図をつくる根本要因」
  • 国防基本姿勢:「地域情勢の不必要な緊張激化を願わないが新たな戦争勃発を防ぎ、朝鮮半島地域の平和安全を保証しようとする志向から地域の軍事的均衡保障のための持続的な対応策を講じる」、「核力量を含む全ての抑止力を加速的に強化するための一連の新しい計画事業について言及し、核戦力を一層高度化していく確固たる方針を再び明らかにした」(「新しい計画」等の具体的説明はなし)
  • ウクライナ情勢への言及:「ウクライナの悲劇的な状況・・の裏面中心には一極覇権樹立野望の幻覚に陥って・・いる米国という実体がある」、「我が軍と人民は朝ロ・・条約の精神に合致するよう、自己の主権と安全、領土保全を守るためのロシアの軍隊と人民の正義の偉業を変わることなく支持、声援する」
  • 人民軍の当面課題:①「何よりも政治・思想強兵化、道徳強兵化問題・・特に我々の軍人たちを敵に対する正しい認識と断固たる対敵観念をいっぱい満たした思想と信念の剛毅な闘士に育て上げるのが重要」、②「人民軍の戦闘能力を最高度へ引き上げる(ため)」、「今年を訓練の年になるようにする」、「戦争準備を現代戦の要求に即してより徹底的に整える」、「鉄の規律と健全な軍風を樹立」

ウ その他本日「労働新聞」掲載の「建軍節」関連行事(いずれも8日実施)

  • 国防省の指揮官と軍種司令官、大連合部隊長が錦繍山太陽宮殿を訪問
  • 慶祝宴会
  • 朝鮮人民軍指揮メンバーの体育競技
  • 音楽舞踊総合公演(4・25文化会館)
  • 青年学生の舞踏会(平壌、各道所在地、各市・郡)
  • 人民代表団(党・政府の幹部、省・中央機関、地方党・政権機関の幹部らで構成)が人民軍部隊を訪問
    • 2月8日付け「労働新聞」は、「朝鮮人民軍は我が国家と人民の平安と幸福を固く守護していく不敗の革命強軍である」と題する社説を掲載

 金正恩の上掲演説は、周辺における「軍事的不均衡」への懸念や軍内での「対敵」教育の強調など。基本的に既存の主張を踏襲するものといえる。韓国報道などでは、「核力量を含む全ての抑止力を加速的に強化するための一連の新しい計画事業」などの表現に注目が集まっているようであるが、こうした報道ぶりは、核戦力をはじめとする軍備増強の加速化を印象付けようとする従前からの宣伝戦略の一環とみるべきであり、特段の新味を感じさせるものではない。

 なお、ウクライナ戦争に関しては、上掲のような言及はあったものの、ロシアへの抽象的な「支持、声援」表明にとどまっており、既に相当な人的被害を出した「派兵」に関しては口をぬぐい続けている。その実情(惨状)が軍内に漏れ伝わるのは時間の問題と思われる。早めに何か布石を打っておいた方が良いようにも思うのだが、余計な心配か。