rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

4月3日 朝鮮中央通信記事「全社会的、全人民的な行動一致で伝染病防疫事業 更に強化」(4月4日記)

 

 標記は、「このたび開催された国家非常防疫事業総括会議」の内容とそれを受けた関連機関の対応などに関する記事である。何故か「労働新聞」には掲載されていない模様である。

 記事によると、同会議においては、防疫事業における模範的な事例が紹介・評価される一方、「防疫事業を慢性的に対する(漫然と行うの意味であろう)一部否定的な現象が強く総括された」。そして、「世界的にウイルス伝染病が完全になくなるまで国家非常防疫体系をそのまま維持し、全社会的、全人民的な行動一致で伝染病防疫事業を強化することについて特別に強調された」という。

 また、各級非常防疫指揮部及び病院、診療所などがそれぞれ整斉と関連活動を計画推進している旨を伝えている。

 一方、「中央非常防疫指揮部の統一的な指揮にしたがって隔離解除事業が厳格に実施されて」おり、現在残っている「医学的監視対象者」は、全国で500余名であるとしている。

 

 最近、北朝鮮での新型肺炎患者の大量発生などに関する情報が漠然としたまま報じられることが多いが、それらの情報の信ぴょう性はいかほどのものなのだろうか。日・米・韓ともに、桁は違うが国内の蔓延に苦しんでいる中、北朝鮮が「感染者ゼロ」を主張しているため、「自分たちがこれほど酷い目にあっているのに、あの国がゼロとは」という不快感が募って(あるいは、その他の諸々の思惑・希望的観測などが働いて)、そのような不確実な情報が歓迎される素地ができているのではないだろうか。

 局所的な発生の可能性は否定できないものの、少なくともこれまでのところ、爆発的な感染が生じたり、蔓延が加速化したりしている可能性は極めて低いと考える。仮にそのような状況が生じていれば、いかに北朝鮮といえども、もう少し具体的な情報が出てくるのではないだろうか。

 標記の記事も、概して北朝鮮の状況が安定的であることを示唆していると考えられる。そうであるからこそ、「慢性的に対する現象」が生じるのではないだろうか。紹介された会議の目的も、そういう中でも、緊張感を解かずに防疫事業を粘り強く継続すべきことを改めて強調するためのものであったと見るのが自然な解釈であろう。状況がますます悪化している中であれば、もう少し違った形の結論が示されるのではないだろうか。

 残りの隔離者(監視対象者)が500余名になったというのも、3月27日に隔離対象者が2,280余名と報じられたこと(更には、かつて1万名を超える対象者がいたと推定されること)と比較すると大幅な減少である。

 状況証拠的にも、①最近の金正恩の出現報道(軍訓練視察、平壌総合病院着工式)に際し、周囲にマスクをしていない人物がいること、②4月10日に最高人民会議の開催が予定されていること、などをあげることができる。なお、①について、宣伝のため敢えてそうしたとの見方もあるようだが、北朝鮮においては、金正恩の安全確保は何物にも替え難い最高目標であり、宣伝のためにそれを犠牲にすることはありえないであろう。②が実際に開催されれば、以上の推測はかなりの確度を持つことになると考える。