rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

4月3日 論説「青年教養事業に革命の前途が掛かっている」

 

 主張の趣旨は、これまでにも繰り返されてきたことであるが、表現に興味深いものがあるので取り上げた。

 論説は、まず、北朝鮮の青年の現状は立派であるとした上で、しかし、その成果に満足・安住してはいけないとして、次のように戒める。

 「青年強国は打ち立てるのは大変でも、それが崩れるのは瞬間である。青年教養事業こそ一時も疎かにできず、絶対に傍観することのできない重大な問題である」。そして、それがそれほど重大であることの今日的理由として2点をあげている。

 第一は、「青年たちの力強い戦闘によって社会主義強国建設がより加速化されるから」である。「政治思想的に準備できていなければ、自分一人だけを考える利己主義、他人の徳(功の意味であろう)で生きていく寄生虫、義務の前に権利を置くごろつきのほかなることができない」のであるから、次代を受けつぐ青少年をそんな風にするわけにはいかない、というのである。つまり、「加速化」よりも、実は、「失速・崩壊」に陥ることを避けるためとの趣旨が強い。

 第二は、「敵どもの思想文化的浸透策動の主たる的が外でもない青年たちであるから」である。そのような中、「今日の青年達には革命の試練の中で鍛錬されなかったという制限性がある」ことに加え、「青年は好奇心が多く、感受性が鋭いために、誰よりも周囲の環境の影響を多く受ける」という特性からして、青年教養が喫緊の課題であると主張する。

 したがって、「青年たちの中で表れる色々な不健全な現象を変質していく思想精神状態の反映として、異色的な思想文化の侵襲として覚醒して対応せず、単純に彼らの趣味や趣向であるとみなすならば、その後禍は実に厳重である」として、青年の行動を政治思想的文脈から把握対応すべきと訴える(下線は引用者)。

 更に、「国と民族の花である青年たちを金のためなら体面も良心も気にかけない低劣児、安逸と享楽だけを追求する役立たずな人間として堕落させることは、最も大きい罪悪である」とまで主張する。

 以上に引用したような非難の言葉は、文脈上は、現在の北朝鮮青年に対して用いられているわけではなく、あくまでも、青年教養をしっかり行わないとそうなるという戒めとして用いられているものである。しかし、そうは言っても、「寄生虫」「ごろつき」「低劣児」などの強い表現からは、それらがまったくの仮想を述べたものとは考えにくい印象がある。とりわけ、下線部の記述は、一部の人たちがそういう対応をしていることを踏まえての主張と考えられる。

 少なくとも、この論説の筆者の基準からすると、目に余る行動を敢えて行う青年層が出現しており、また、既成世代の中にはそれを傍観・許容する人々も存在すると考えることができるのではないだろうか。