rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

4月2日 解説「正面突破戦における思想戦の重要課題」

 

 標記記事は、「解説」として紙面冒頭に掲げられている。社説に準じる重みを持つものと考えてよいのではないだろうか。標題に関し、三つの課題をあげている。

 第一は、「党に対する忠誠は最も熱烈な愛国であるということを深く体得させること」である。その趣旨は、「正面突破戦は尊厳高い我が党の領導的権威を保衛するための決死戦であり」・・・「すべての党員と勤労者を党と思想と志、歩みを共にする真の忠臣、正面突破戦の勝利のためであれば何をも躊躇しない堅実な闘士として準備させなければならない」ということである。

 ここで注目したいのは、まず、「党の対する忠誠」の必要性の根拠として「愛国」という概念が用いられていることである。それは換言すると、「愛国」は無条件で受け入れられる説明不要な概念であるが、「党に対する忠誠」は、そうではないということを意味する。また、「党の領導的権威を保衛するための決死戦」が必要ということも、その「権威」が動揺の危機にあることを示唆しているともいえよう。なお、ここで「党」というのは、金正恩を意味すると考えられるので、結局のところ、以上の主張は、彼の権威が人々にとって絶対無条件なものとして受け入れられているわけではないことを逆に物語っているように思われる。

 第二の課題は、「自力更生だけが生きる道であるという真理を骨の中に深く刻み込むこと」である。すなわち、「今、我々は経済建設と人民生活において多くの隘路と困難を経ている。しかし、すべての部門、すべての単位において自力更生の革命精神を高く発揮し主体的力、内的動力を引き続き増大させていくならば、最悪の試練期を最高の上昇期へと反転させていくことができる」という考え方を普及せよとの主張である。

 第三は、「不屈の信念と自信感を植え付ける」ことである。具体的に言えば、「華麗な変身を望み、国の尊厳と安全を売り、革命的原則を譲歩することは、すなわち自滅の道である」ことを銘記させ、「大国的自尊心、革命の獲得物をいくばくかの食糧や金銭と絶対に交換することはできないとの自覚、我々自身と後代のため骨を削ってでも必ずや繁栄の土台を固めなければならないとの時代的使命感」を抱かせるということである。

 第二と第三の課題は、表裏一体となって、現在の困境の中でも「譲歩」をしてはならないとの強い覚悟を人々に抱かせることを訴えたものであるが、そこで用いられている表現からは、逆に「華麗な変身」や「譲歩」への期待が根強いことがうかがわれる。

 総じて言えば、このような記事の内容そして掲載は、「正面突破戦」に突き進む現在の路線及びそれをけん引する金正恩に対して、人々の間で反発とまで言えるかは明らかでないが、少なくとも不信・懐疑の念が依然として払拭されていないこと、そういった状態への対応が今日、政策の成否を左右する重要課題となっていることを示すものと考えられる。