rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

2月8日 「伝染病を遮断するための事業を力強く推し進める 全国各地で」(2月9日記)

 

 「労働新聞」は、連日、コロナウイルス感染症に関する記事を多々掲載している。標記記事もそのうちの一つで、各地の防疫対策を伝えるものであるが、その中で、平壌及び国境地方に関する部分を紹介したい。

 まず、平壌市非常防疫指揮部の活動に関しては、市内各地での活動に加え、「首都に入ってくるすべての通路において検査検疫事業をしっかりと実施できるようにすると同時に検診と医学的検査を強化している」ことを伝えている。

 一方、中国と接する咸鏡北道での活動については、「会寧市、穏城郡、茂山郡では、国境沿線地帯に位置している地域的特性に合わせ対策をすきまなく立てている。特に、穏城郡では、該当部門勤務者が国境封鎖を徹底して行うようにすることに力を注いでいる。道では、住民が病気の危険性と症状、予防対策をよく知り、衛生防疫事業に自覚的に奮い立つようにしている」ことを伝えている。穏城郡は、かねて中国との非合法往来が多いと伝えられている地域である。

 これらの記述からは、北朝鮮が中国国境地帯でのコロナウイルス流入に強い警戒心を抱き、国境の完全封鎖に努めると同時に、首都平壌については国内他地域に対する防疫線を設けていることがうかがえる。要するに、北朝鮮では、国境に加え平壌内外という2重の防疫ラインが設定されているといえよう。

 とりわけ、国境沿線地域に対して危険視していることは、9日掲載された国家計画委員会における同感染症対策活動を紹介する「大衆的な事業へと確固として転換させて」と題する記事の中で、「(同)委員会では、現在、政務員(勤務員)の国境地域に対する出張を極力制限するようにしている」とされていることからもうかがえるところである。

 前述咸鏡北道の取組み記事などから勘案しても、北朝鮮当局としては、少なくとも国境沿線地域については、発病者はともかく、コロナウイルス流入は既に起きたものと想定した上で各種対策を実施しているのではないだろうか。

 ちなみに、韓国の聯合通信は、上掲の国家計画委員会に関する記事の中で、「委員会では、諸幹部によって非常防疫指揮部を組織し、指揮部メンバーの事業分担を明白にした」との部分などを根拠に、国家計画委員会が北朝鮮の防疫活動全般で「事実上、総括」的役割を果たすようになった旨の記事を掲載していたが、まったくの勘違いであろう。どう考えても、上掲部分は、同委員会内に、同委員会としての防疫活動を指揮するための「非常防疫指揮部」が設置されたという以上の意味とは解せない。国家計画委員会が内閣の経済活動の指揮塔的役割を果たすことに引きずられて、誤解したのかもしれないが、韓国を代表する通信社としては、誠にお粗末なミスとしかいいようがない。ちなみに、同通信は、同記事の第2報(総合)では、当該部分をすべて削除しているが、明示的な訂正はしていない。姑息な対応と言わざるを得ない。