rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

2022年1月15日 平安北道鉄道機動ミサイル連隊が「検閲射撃訓練」を実施

 

 本日の「労働新聞」は、平安北道鉄道機動ミサイル連隊が14日、標記訓練を実施したことを伝える朝鮮中央通信の記事を掲載した。同記事の骨子は、次のとおりである。

・立会者:「朝鮮人民軍指揮メンバーと国防科学院の指導幹部たちが・・指導した」

・訓練目的:「鉄道機動ミサイル連隊戦闘員の戦闘準備態勢を検閲し、火力任務遂行能力を高める」

・実施状況:「連隊は、14日午前、総参謀部から不意の火力任務を受領、迅速に指定された発射地点に機動し、2発の戦術誘導弾で朝鮮東海上の設定目標を命中打撃した」

「講評」:①「迅速な機動性と命中性を保障した平安北道鉄道機動ミサイル連隊の戦闘動員態勢が高く評価」されるとともに②「全国的な鉄道機動ミサイル運用体系を正しく立て、我々式の鉄道機動ミサイル戦法をより完成させるための方途的問題が討議された」

 なお、同ミサイル発射に関する韓国軍の発表をまとめると、14日午後2時41分、52分(11分間隔)に、弾道ミサイル2発を発射。飛距離約430㎞、最高高度約36㎞、平安北道義州付近から咸鏡北道吉州舞水端沖に着弾というもので、報道では、発射ミサイルの種別についてKN23(北朝鮮イスカンダル)との推測も伝えられていた。

 鉄道機動ミサイル連隊によるミサイル発射訓練は、昨年9月15日の初登場以来の4か月ぶりのこと。今次報道では、連隊名に、前回はなかった「平安北道」との地名が付されていることから、各道に同連隊が配備されている(あるいは配備されようとしている)ことがうかがえる。前回訓練時の報道では、「旅団として拡大改編」の可能性が示されていたが、仮に複数の道に連隊が配置されることになれば、旅団を超える師団規模の部隊になると考えられる。今次訓練は、上記「講評」の②の部分から推測すると、そうした部隊編成が現在進行中であり、それをどのように進めるかのデータを得ることも狙いの一つであったと考えられる。また、国防科学院からの参観者がいることからは、そうした部隊編成と並行して、搭載ミサイルないし発射装置(台座となる鉄道車両も含めて)などに関し、なんらかの改良等が図られていることもうかがえる。

 ただ、問題は、今次訓練がそうした技術的・軍事的狙いだけによって実施されたのか、あるいは、昨日発表された外務省代弁人談話と同様に、米国の北朝鮮に対する追加制裁措置に対する反発・警告という意味合いも込められていたのかという点である。

 追加制裁発表(12日)から2日後の実施という時期性を考えると、無関係とは言い難いであろうが、「強には強で対応」というかねて掲げてきた原則を実行するという趣旨であって、自ら緊張を更にエスカレートさせていこうという意図まではないのではないだろうか。前回の演習時には朴正天という最高幹部が立ち会ったことが報じられたのに対し、今次は「指揮メンバー」としか報じていないこともその根拠となりえよう。報道ぶりも前回よりはやや抑制的な印象がある。引き続きの注視が必要ではあるが。