rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

2023年3月15日 社説「人民経済計画を違えることなく遂行する強い規律を確立しよう」

 

 標記社説は、先の党中央委第8期第7回全員会議において「人民経済計画遂行規律を徹底して確立すること」が議題とされ、当該の決定がなされたことを受けたものであり、前段で「人民経済計画を違えることなく遂行する」ことの重要性について、後段で、そのための課題を論じる構成となっている。

 前段では、まず、「人民経済計画を遂行できないことは、理由と条件がいかなるものであれ、計画規律違反となり、国家の法を違える行為となる。したがって、人民経済計画を違えることなく遂行する規律を徹底して立てることは、すべての機関、公民の当然の本分となる」とした上で、「人民経済計画を遂行規律をより徹底して確立すること」の重大性・必要性として、①「党中央の権威をくまなく保衛するための重大な事業である」こと、②「人民に対する献身的服務となる」ことの2点を挙げている。

 なお、①については、「重なる難関の中でも富興強国の新時代、社会主義の全面的発展期を果敢に切り開いていく偉大な我が党の尊厳と絶対的権威をくまなく擁衛するための基本要求」とも主張しており、計画が実現できなければ、その基となる「全面的発展」路線を指導・展開する金正恩の権威が揺るぎかねないとの危機感をうかがわせている。

 後段では、まず、「すべての幹部と党員と勤労者は、人民経済計画遂行に対する正しい観点を持たなければならない」ことが主張されている。二番目の課題は、「すべての部門、すべての単位において自らに託された人民経済計画をいかなることがあっても違えることなく遂行する規律と秩序を徹底して立てなければならない」というもので、これは事実上、当初の命題の繰り返しに過ぎないが、そこでは、それに反する具体例が列挙されている。例えば、「生産と建設を正常的に行わないでいて月末や分期別、年末になって突撃式に進めて計画に合わせたり、現行生産と整備補強を並行しない現象、責任を上下に押し付ける現象、自己の単位の生産実績にだけ神経を使い関連単位にわたすと計画された生産物の供給とその質の保障を疎かにする本位主義、単位特殊化」などである。三番目の課題は、「法機関において、すべての部門、すべての単位が示達された計画を正確に無条件執行していくよう常に監視し統制」することである。最後に、「党組織は政治事業、思想事業を優先させて、行政経済幹部が計画遂行において責任と本分を尽くし、誰もが人民経済計画遂行に邁進するよう」に指導・督励することを求め、特に「月生産総括」を実質化し、計画遂行に活用することを訴えている。

 党中央委全員会議の際の報道では、この「人民経済計画遂行規律強化」について具体的に何が討議され、何が決定されたのか明確な言及がなく、判然としなかったので、この社説に注目したのであるが、以上のような内容からするに、従前と同様の精神論的訴えが大半であったことが推測される。強いて言えば、新味が感じられるのは、法的機関(具体的には検察所か)による監視、統制という方法が明示されたことであろうか。それも、おそらくは、従前になかった権限を新たに付与したというよりは、既存の権限を活用してそうした機能を発揮するよう求められたということであろう。

 結局、全員会議でのこの問題に関する最大の眼目は、課題の二番目で示されたような否定的現象を具体的に適示し、それへの反省を迫ること、換言すると、行政経済幹部に対する引き締めであったのではないかと思われる。