rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

2024年1月8日 西海岸砲撃に関し、韓国軍を欺瞞したと主張

 

 韓国軍は、1月6日、北朝鮮が5日に続き6日にも午後4時から5時の間、延坪島北西の陣地から60余発の砲弾を射撃し、一部が北側限界線(NLL)北側の海上緩衝地域に落下したと発表した。ただし、射撃方向が韓国に向いてのものでなかったため、韓国側からの対応射撃は実施しなかったと説明した由である。

 更に、韓国軍は、7日にも、北朝鮮が同日午後4時ころから5時10分まで延坪島北方において90余発の砲撃を行ったと発表した。

 こうした中、朝鮮中央通信は、7日、金予正副部長の談話及び朝鮮人民軍総参謀部報道を相次いで報じ、6日に行ったのは「砲射撃模擬欺瞞作戦」であり、韓国側の「6日に砲撃実施」との発表は、これに欺瞞されたものである(7日には88発の海上実弾射撃訓練を実施)と主張した。

 このうち、金予正副談話は、「誤判、臆測、無理押し、負けん気は挽回できない災難を自ら招くであろう」と題したもので、6日の北側の行動は、「(韓国側に)ひどい恥をかかせるために欺瞞作戦を行った。我が軍隊は、130ミリ沿岸砲の砲声を模擬した発破用の爆薬を60回爆発させて、大韓民国軍部ごろの反応を注視した」ものであり、それに対し韓国側は、「爆薬の爆音を砲声に誤って判断し、砲撃挑発に臆測してずうずうしく弾着点まで西海の『北方限界線』北方の海上緩衝区域に落ちたという嘘をついた」と主張、「我々が投げた餌を一度も噛んでみないで、うのみにした」などと揶揄するとともに、「我が軍隊の引き金はすでに安全装置を外した状態にある。すでに宣明したように、もし、いささかの挑発でも仕掛けてくる場合には、我が軍隊は即時の火の洗礼を加えるであろう」と今後の対応を牽制している。なお、朝鮮中央放送は、同談話を報じるに際し、地上での爆発物埋設・爆破などの光景を動画で報じている由である。

 一方、総参謀部報道は、7日の砲撃に関し、「方向上、軍事境界線と無関係であり、敵対国にいかなる意図的な脅威も与えなかった。・・通常の訓練体系の中で計画に従って実施された」などと主張し、抑制的な姿勢を示している。

 6日に実際に「砲撃」があったのか否かについては、断定はできないものの、動画まで公開していることからすると、北朝鮮の主張を一概に「虚偽宣伝」はと決めつけられないような感じがする。この件に関する韓国聯合通信の最近の記事で、5日と7日の「砲撃」について説明する一方、6日の「砲撃」に関する韓国軍の発表内容への言及がなくなっていることも、こうした印象を裏付けるものといえる。

 仮に、北朝鮮の「欺瞞作戦」実施が事実であるとするなら、その狙いは、何か。単に韓国軍に「恥をかかせる」というにとどまらず、最近の情勢下で発生可能性を否定できない早計・過剰反応による不測の事態発生を未然に防止するため、韓国側が北朝鮮の動向評価を慎重に行うよう「教訓」を与えるものであったと考えられる。金予正の談話の題目は、まさにそうした狙いを示しているように思われる。