rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

2022年12月6日 米韓への対抗砲射撃を継続(加筆版)

 

 昨日の本ブログで予想したとおり、今日も米韓の砲撃訓練に対抗する形で北朝鮮海上緩衝区域への砲射撃を実施した。

 韓国軍によると、北朝鮮は、6日午前10時から午後にかけて江原道高城郡一帯で90余発の、また、午後6時ころから江原道金剛郡一帯で10余発の、放射砲と推定される砲射撃を実施したという。これらの弾着地点は、いずれも東(日本)海上の北側海上緩衝地帯であったとされる。

 これに関し、北朝鮮は、昨日同様、本日も「朝鮮人民軍総参謀部代弁人発表」の形で、米韓の砲射撃を観測したとし、これに対処するため、「強力対応警告目的の海上実弾砲射撃を断行する命令を下した」ことを明らかにするとともに、米韓に対し「挑発的な軍事行動を直ちに中断」するよう要求した。

 これに先立ち、米韓軍側は、昨日に続き本日も鉄原郡において、MLRS(多連装ミサイル)24発、K―9自走砲140発などの射撃訓練を実施することを明らかにしていたとされる。

 以上の動向に関して指摘できることは、北朝鮮側の発射砲弾数が米韓側よりも少ないこと、総参謀部代弁人発表の文面が昨日に比較するとかなり簡略化されていること、の2点である。

 それを勘案すると、昨日来の動向は、米韓側の通常の演習を奇貨として緊張を激化させているというよりは、むしろ、前線付近での米韓の動向があったので、やむなく相応の行動をとったが、いい加減にしてくれというのが本音ではないだろうか。

加筆部分

 上記をアップした後、「朝鮮人民軍総参謀部代弁人発表」が再度発出されたことを知った。同「発表」は、韓国報道によると6日午後8時ころ報じられたとのことである。

 「発表」は、まず、同日、「東部前線部隊」が「82発の放射砲弾を延べ8時間30分にわたり海上に射撃した」ことについて、「敵の計画された陰凶な挑発企図に対する我が軍隊の対応及び警告性軍事行動であった」とした上で、米韓側が「(こうした)我々のやむを得ない対応を誘発した後」に9・19軍事合意違反と非難したについて「責任転嫁」と主張するとともに、同合意の違反を言うのであれば、「敵どもがこれまでの期間行ってきた合意に違反する行為からまず計算されるべきである」と論じている。

 更に、「前線隣接地帯での刺激的な軍事行動を直ちに中断することを再度厳重に警告」し、今後の対応について、「我々の軍事的対応は、昨日と今日は異なり、今日と明日はまた異なるように、より攻勢的に変わるであろう」と一層の強硬姿勢を示唆して結んでいる。

 同「発表」は、発出のタイミング及び内容から見て、それまでに韓国軍側が北朝鮮の砲撃について9・19軍事合意違反と繰り返し非難したことに反論するためのものであることは明らかであり、いわば、言論分野での「相応の対抗」措置とみるべきであろう。

 したがって、最後の部分の「より攻勢的に変わる」との表現は、その前段の「刺激的な軍事行動」の中断要求を強調するためのレトリックの側面が強く、自ら進んで更なる軍事行動を展開する意向を示したものではないと考えられる。文中の「やむを得ない対応」という表現からも、緊張激化を望んではいないことがうかがえる。