rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

2022年10月24日 南北間での軍事活動の応酬がまたも発生

 

 韓国軍の発表によると、24日午前3時42分ごろに黄海上の南北軍事境界線にあたる北方限界線(NLL)に近い白翎島の北西(約27キロ)で北朝鮮の商船1隻がNLLを侵犯し韓国側に入ったため、韓国海軍艦船が警告通信と警告射撃を行った。

 その後、北朝鮮は、同日午前5時14分ころ、黄海道長山岬一帯で、NLL北側の海上緩衝区域に放射砲弾10発を発射したという、

 一方、朝鮮中央通信も、同日、次のような内容の「朝鮮人民軍総参謀部代弁人発表」(同日付け)を報道した。

〇 今日24日未明3時50分ごろ、南朝鮮かいらい海軍第2艦隊所属の護衛艦が不明船舶取り締まりを口実にして白翎島の北西20キロの海上でわが軍海上軍事境界線を2.5~5キロ侵犯し、「警告射撃」を加えた。

〇 朝鮮人民軍総参謀部は、西部前線海岸防御部隊に5時15分に10発のロケット砲弾を発射して敵の艦船を強力に駆逐するための初期対応措置を取るようにし、我が軍隊は、10発の威嚇・警告射撃を加えた。

〇 朝鮮人民軍総参謀部は、最近、地上前線での砲撃挑発と拡声器挑発に続いて、海上侵犯挑発まで強行している敵に再び、厳重に警告する。

 こうした北朝鮮の軍事行動は、韓国の「挑発」に対しては、応分の対抗行動をためらわないとの先般来の方針に基づくものとみられるが、それが海上にまで波及したことになる。また、前掲「代弁人発表」の中で「拡声器挑発」まで非難していることも注目される。それにも何らかの軍事的行動で対応するとなると、こうした事態は、ますます拡散することとなろう。

 一方、韓国軍の対応についても、そもそも、「商船」の海上越境に対して「射撃」まで必要であったのかという疑問も感じる。もちろん、それに至る経緯・状況などが不明なので、一概に批判するわけではないが、保守政権の対北朝鮮姿勢に即して、軍の行動も、よく言えば「積極・果敢」、悪く言えば「前のめり」になっているとの印象を禁じ得ない。

  以前にも指摘したことだが、今回の事態も、まさにそうした双方の相互作用の結果であり、そうした出来事の積み重ねの中で、状況は徐々に危険水位に近づいていると言えよう。