rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

2022年10月14日 韓国軍演習への軍事的対抗を誇示(加筆版)

 

 昨日の本ブログでも指摘したばかりだが、昨晩来、北朝鮮が米韓への軍事的対抗活動を一段とエスカレートさせている。韓国側報道をベースに昨日来の動向を整理すると、次のとおりとなる(地名は音訳含む)。

  • 13日午前8時から午後6時まで10時間にわたり、江原道鉄原射撃場において、駐韓米軍がMLRS(多連装ロケット)の射撃訓練を実施。射撃地点は、軍事分界線(MDL)から5㎞以上離れており、南側に向け射撃
  • 13日午後10時30分から14日午前零時20分ころまで、北朝鮮軍用機10機が韓国軍の設定した戦術阻止線(TAL)を超え、飛行禁止区域に近接して飛行(西部内陸地域:飛行禁止区域まで5㎞、MDLまで25㎞。東部内陸地域:同7㎞、47㎞。西海地域:NLLまで12㎞)。(10月6,8日の空軍演習の際は、TALは超えず
  • 14日午前1時20分から25分ころまで、黄海道馬場島一帯で西海上に130余発、2時57分から3時7分ころまで、江原道球邑里一帯で東海上に40余発、それぞれ砲弾を射撃(弾着地点は、海上緩衝区域内部であり、9・19軍事合意に違反
  • 14日午前1時49分ころ、平壌順安一帯で東海に短距離弾道ミサイル1発を発射、飛行距離700余㎞、高度50㎞、速度マッハ6
  • 14日午前2時17分ころ、朝鮮中央通信が「朝鮮人民軍総参謀部代弁人発表」(同日付け)を報道。その骨子は、次のとおり

      〇 10月13日、南朝鮮軍は、我が軍第5軍団前方地域において、10余時間にわたり砲射撃を敢行した。

     〇 「我々は、南朝鮮軍部が前線地域で敢行した挑発的行動を厳重視し、強力な対応軍事行動措置を取った」

     〇 「我が軍隊は、前線地域で軍事的緊張を誘発させる南朝鮮軍部の無分別な軍事活動に厳重な警告を送る」

 以上の動向に関し、特に注目すべきなのが下線部の動きであり、事態がエスカレートの方向にあることを示すものといえる。また、いよいよ、「総参謀部」が関与してきたことも、注目すべきであろう。なお、「9・19合意」に関しては、このところ韓国国内(政界)で「破棄」説などが取りざたされていたことも、北朝鮮をして、敢えて「違反」行為に出させた背景になっていると考えられる。私の語学力不足かもしれないが、おそらく南北ともに、「負けるが勝ち」という格言はないのであろう。どこまで進むのだろうか。

 いずれにせよ、日本がそうした、文字通り「無分別な」エスカレーションに煽られる必要はないと思うが、煽られているのではなく、「便乗している」のであろうか。

以下加筆部分

 前掲記事を執筆後、更なる状況が追加された。

 まず、韓国政府が、北朝鮮の一連の軍事行動への対応として、北朝鮮核・ミサイル等の開発に関係しているとする個人15人と16の機関を独自の制裁対象に追加指定したことを発表した。韓国政府のこうした動きは、2017年12月以来約5年ぶり、尹政権発足後は初めてとのことである。

 一方、韓国軍の発表によると、北朝鮮は、午後5時ころから6時30分ころまで江原道長田一帯で東海上に向け90余発、また、午後5時20分ころから7時ころまで、黄海南道の海州湾一帯で90余発、長山岬西方一帯で210余発、あわせて390余発の砲弾を射撃した。着弾地点は、いずれも、北方限界線(NLL)北側の海上緩衝区域内(9・19軍事合意違反)であったが、韓国の領海内への着弾は観測されていないとのことである。

 コメントは、前述のとおりであり、特に付け加えることはない。