rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

2021年6月21日 社説「全党、全民が堅忍不抜の闘志により党中央委員会第8期第3回全員会議で決定された重大政策を徹底して貫徹しよう」

 

 標記社説は、まず先の中央委員会第8期第3回全員会議に関し、「全員会議が行われた4日間は全国人民が敬愛する総秘書同志の崇高な為民献身の世界をより胸熱く刻み抱く日々であった」としつつ、「全員会議の基本思想は、すべての部門、すべての単位において党と革命の前に帯びた聖なる責任と本分を深く自覚し、百倍に奮発奮闘して今年の戦闘目標を輝かしく完遂し、人民により良く安定した生活条件を整えてやろうというもの」とし、「金正恩同志がおられるがゆえにいかなる苦難も恐れることなく、必ず幸福な明日が来るというのが党中央委員会第8期第3回全員会議の知らせに接した我が人民の共通の声である」と主張するなど、その意義及び効果を自賛する。

 その上で、同会議の「決定貫徹のための全人民的な決死戦を展開」するための課題として、①「(同)会議思想によりしっかりと武装」こと、②「必勝の信念と楽観にあふれて、百折不屈の革命精神と自力更生、艱苦奮闘の闘争気風を高く発揚」、③「すべての幹部が非常な覚悟と熱情を抱いて全員会議決定貫徹のための作戦と指揮を緻密に実施」、④「先進科学技術に依拠して今年の総進軍を力強く促進」、⑤「党事業を革新し強化していく」、ことなどを訴えている。

 同社説の前段に表現された金正恩に対する人民の認識は、それが現実であるか否かはともかく、まさに北朝鮮が今次会議に込めた(そう感じて欲しいという)狙いをそのまま表現したものといえよう。

 一方、後段に示された課題は、これまでも繰り返し主張されてきた、精神主義的・抽象的なものにとどまっている。そのことは、結局、同会議において、人民生活の安定実現という目標を提示はしたものの、その実現に向けた具体的・効果的な方策を打ち出すことはできず、ひたすら、幹部の献身をはじめとする精神主義的訴えを行っただけであったということを如実に反映しているといえよう。

 ちなみに、本日の「労働新聞」も、昨日に続き、「絶世の偉人を高く奉じた大きな矜持と自負心を抱いて新たな前進の時代、躍動の時代を開いていく熱意で沸き立つ 党中央委員会第8期第3回全員会議に対する反響」との共通題目下、各界からの投稿文や発言を紹介する記事などを掲載している。そのうち、「人民に責任を持ち、祖国の未来に責任を持つ」と題する江原道党責任秘書・金秀吉の投稿文は、「言葉でだけ忠誠を唱え、決意だけで本分と使命について自覚するときではない。果敢な実践が必要である。骨を削り肉をそぐ行動だけが要求され、その行動は実際に人民の皮膚に直接触れる結果によってだけ評価されうる」として、実践・結果の重要性を強調しつつ、「当面して、食糧問題、人民消費品問題、子供たちの健康管理問題に優先的に関心をめぐらし、道内のすべての潜在力と内部予備を総動員して人民のあい路と不便を最大限低減するための事業を最後まで強く推進する」との決意を披歴している。

 同人は軍総政治局長を経ただけになかなかの名文と思うが、それはさておき、ここからうかがえることは、まず、全員会議で「育児政策」が議題され、国家負担による乳製品などの供給が決定された背景として、「子供たちの健康管理問題」が存在していたということである。

 次に、これほど「人民生活の安定向上」が力説されている中でも、その解決は、各地方の「潜在力と内部予備」によるものとされていることである。繰り返しになるが、結局、金正恩が今次会議で示したのは、「人民生活の安定向上」という目標だけであって、その実現の手段は、地方がそれぞれ「骨を削り、肉をそいで」見出さなければならないということである。