rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

2021年7月30日 朝鮮人民軍第1回指揮官・政治幹部講習会開催を報道

 

 本日の「労働新聞」は、標記講習会が金正恩の指導の下、7月24日から27日までの4日間にわたり平壌市内の4・25文化会館において、全軍の連隊級以上部隊の指揮官・政治委員及び総参謀部、総政治局、国防部の高位幹部らを集めて開催されたことを報じるとともに、27日、金正恩が同講習会参加者とともに党本部庁舎前において記念写真を撮影したことを報じた。

 まず、講習会の概要から紹介すると、初日(24日)には、会場に金正恩を迎えての「軍迎接儀式」が行われた後、金正恩が「開講辞」を通じて、講習会開催の目的を述べるとともに、「軍政幹部の作戦指揮能力と部隊管理水準、政治実務的資質について詳細に分析」した上で、同講習会を通じて「部隊事業全般を深刻に検討総括し、優秀な経験を交換し、不足点と偏向を克服」するよう求めた。

 その後、権英鎮総政治局長が「報告」を行い、「各級部隊と軍政幹部の事業において現れている主たる欠陥とそれを生み出している原因が具体的に分析された」という。

 これに続き、「部隊強化の経験と教訓が反映された討論」が行われたとされるが、その人数、職名などは報じられていない。

 2日目(25日)には、初日に続き「討論」が行われ、「部隊指揮管理、軍人に対する教養事業をはじめとした軍事政治事業において現れている欠点が深刻に分析批判」されると共に、「戦闘力強化と軍紀確立、軍人生活改善において先頭に立っている模範的な部隊に対する評価」があったとされる。

 その後、これら「討論」を受ける形で、金正恩が「結論」を述べた。その中では、同講習会が「党第8回大会が提示した我が革命武力の最精鋭化、強軍化路線と課題を正確に徹底して貫徹する上で各級部隊指揮官、政治幹部の役割を決定的に高めるために組織」されたとすると共に、「このたびの講習会を戦勝節を選んで組織した」ことを明らかにし、「戦勝世代の偉大な闘争精神」の継承を訴えた。

 また、具体的な課題の柱としては、①「(人民軍の)部隊を党の思想と領導に絶対忠誠、絶対服従する政治思想集団」とし、「党中央の命令指示を即時に接受し決死貫徹する革命的軍風を徹底して確立する」こと、②「(敵の)いかなる軍事的挑発にも能動的で構成的に対処できる準備を完成する」ために「部隊の戦闘力強化に最大の拍車をかける」こと、③軍政幹部の資質と水準、責任性と役割を高めること」などを掲げ、このほか、「軍人により改善された軍務生活条件を保障する」こと、「軍隊内で思想教養事業をより強化する」こと、「軍民一致の戦闘的美風を高く発揚し・・人民の生命財産を命を捧げて守る」ことなどにも言及したとされる。

 そして、最後に「すべての軍政幹部が一層奮発し、全軍に党中央の唯一的領軍体系を徹底して確立し、戦争に対処する準備を完成する事業と軍人生活改善において決定的な前進をもたらすものとの確信を表明」したとされる。この3点が最大の眼目であったとも考えられる。

 第3日目(26日)は、「戦火の近衛部隊指揮官が示してくれた崇高な闘争精神と気風を模範として、党が提示した戦闘的課題を徹底して執行し、部隊の軍事政治事業を一段階跳躍させる上で提起される方途的問題を体得させるための講習」が、様々な題目で行われたとされるが、講演者の氏名等は報じられていない。あわせて、「優秀な部隊の経験が紹介された」という。参加者は、これらを通じて、「自らの部隊を党の軍事政策が具現され、無敵の戦闘力を備えた精鋭部隊とするための方法論的問題と生きた経験を深く習得」したとされているので、実務的・具体的な内容が論じられたのであろう。

 第4日目(27日)は、金正恩が「閉講辞」を行い、参加者に対し、改めて「倍加の奮発力と投身力を発揮」し、「非革命的で非戦闘的な思想観点と作風から完全に脱皮」することなどを訴えたとされる。「閉講辞」については、余り具体的な内容は報じられていないが、同日の内容はこれだけなので、それほど簡単なものではなかったとも考えられる。昨日の本ブログで、27日夜に行われた第7回全国老兵大会での演説の際の金正恩の声がしわがれていたと指摘したが、この講習会での「閉会辞」において相当な熱弁をふるったためと考えれば合点がいく。

 同講習会の開催目的については、韓国報道などでは、先の軍高官の降格処分から間もないことなどから、それとの関連を指摘する見方もあり、最初はそうかとも思ったが、以上紹介したような会議の詳報を読むと、「戦勝節」に合わせて以前から計画されていた行事のようにも思える。金正恩の発言をはじめとした指導内容などについても、いわば総花的で従前からの主張の延長線上というか繰り返しであり、何か特定の事案を念頭において、その根本的是正のために開催されたという印象は受けない。

 むしろ、3月に開催された第1回全国市・郡党責任秘書講習会の人民軍版、つまり中核的位置を占める機関の責任者を一堂に集めて金正恩自ら出演して、「戦勝世代に学ぶ」を中心テーマに、参加者の覚醒・奮発を促すという趣旨が強いのではないかと思われる。