rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

2021年7月31日 第1回指揮官・政治幹部講習会関連続報

 

 昨日の本ブログでは書ききれなかったのだが、昨日の「労働新聞」によると、標記講習会の参加者は、27日講習会終了後も平壌に滞在しており、28日には党中央委・中央軍事委が主催する宴会に出席、29日には、三池淵劇場で国務委員会演奏団による公演を観覧したという。

 参加者は、24日の開幕前日には平壌に到着していたと考えられるので、都合1週間にわたり平壌に滞在していたことになる。これは、その間、全国の連隊級以上の部隊指揮官・政治委員が同時に自己の部隊を離れていたことを意味する。

 金正恩は、同講習会の「結論」において、「敵対勢力が狂信的で執拗に各種侵略戦争演習を強化し、我が国家を先制打撃することのできる能力を引き続き体系的に拡大し軍備を増強している現情勢」を指摘し、「いかなる軍事的挑発にも能動的で攻勢的に対処する準備を完成」することを訴えているが、本当にいつ攻められるか分からないという危機意識を持っているなら、軍の運用に重大な影響を及ぼしうる指揮官不在という状態を1週間にわたって敢えて作り出すであろうか。もちろん、それだからこそ同講習会に関する一切の動向を30日になって初めて報道したのであろうが、公式報道しなくても、これだけの大規模な軍指揮官らの移動が米韓側に把握されないという保証はないと考えるべきであろう。

 そう考えると、朝鮮人民軍史上初となる今回の指揮官・政治幹部講習会の開催は、北朝鮮の対外脅威認識の実相を図らずも示したといえるのではないだろうか。換言すると、金正恩にとっては、外部の脅威の抑止よりも軍に対する統制強化の方がより重要な課題であるということを物語っているともいえよう。

 なお、話は変わるが、同講習会は、党中央委及び中央軍事委の共催の形で開催されたものであり、上記宴会も同様であるが、それにもかかわらず李炳哲の姿が一切現れていない。このことは、同人が中央軍事委副委員長のポストから外されていることの反映であるとも考えられる。29日の本ブログで紹介したとおり、先の金正恩の友誼塔参拝に同行した際には、軍筆頭のような立ち位置であったので、どちらとも断定しがたいが、注目を要する点といえよう。ただ、その後、同参拝のテレビニュース映像を見たところ、金正恩が帰りがけに李炳哲に耳打ちするような姿が写されており、それなりの関係は維持(回復?)されていることがうかがえる。