rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

2021年9月16日 昨日の弾道ミサイル発射を「鉄道機動ミサイル連隊の検閲射撃訓練」と報道

 

 本日の「労働新聞」は、北朝鮮が昨日実施した日本海への弾道ミサイル発射に関連して、「朴正天秘書、鉄道機動ミサイル連隊の検閲射撃訓練を指導」と題する朝鮮中央通信の記事を写真とともに掲載した。同記事の骨子は次のとおりである。

  • 演習参観者:党中央委軍政指導部と軍需工業部の幹部、朝鮮人民軍総参謀部と国防科学研究部門の指導幹部
  • 鉄道機動ミサイル連隊の設立経緯:党第8回大会において「同時多発的な集中打撃能力を高め、各種脅威により積極的に対処しうる対応能力を強力に向上させるため」組織
  • 演習目的:「鉄道機動ミサイル体系の実用性を確証し、新たに組織された連隊の戦闘準備態勢と火力任務遂行能力を不意的に評価し、実戦行動手順に熟達する目的の下、遂行」
  • 行動概要:「連隊は、9月15日早朝、中部山岳地帯から機動し、800㎞界線の標的地域を打撃する任務を受けて訓練に参加・・・朝鮮東海(日本海)上800㎞水域に設定された標的を正確に打撃した」
  • 演習結果に対する評価:「朴正天同志は、・・検閲射撃訓練が・・成果裡に実施されたことについて評価し・・鉄道機動ミサイル体系は、全国各地で分散的な火力任務遂行により同時多発的に脅威勢力に甚大な打撃を加えることのできる対応打撃手段となると述べ(た)」
  • 今後の増強方針:「今後、早期に鉄道機動ミサイル連隊の実戦運用経験を重ね、鉄道機動ミサイル旅団として拡大改編する問題についても具体的に協議した」

 以上の報道内容からうかがえることは、昨日の弾道ミサイル発射は、新たなミサイル開発のためのものではなく、既に実戦配備済みのミサイル(おそらく本年3月25日に試験発射されたもの)を鉄道車両に積載して移動・発射するシステムの実証実験・訓練であったということである。

 これまで北朝鮮の陸上発射型ミサイルは、すべて移動用車両(いわゆるTEL)に積載されており、こうした鉄道車両積載というのは新たなスタイルである。そうした部隊が1月の党大会決定を受けて新設され、今回の「お披露目」に至ったということであろう。

 米国でも戦略ミサイルを鉄道に積載し、随時移動させることにより第一撃での破壊を防止する方策が検討されたことがあったと記憶しているが(実現されたかは定かでない)、北朝鮮のこのシステムは、まさにその発想に基づくものであろう。添付写真では、トンネルから出た位置での発射場面が示されているが、山の多い北朝鮮において、各地のトンネルを随時移動させる保管方法は、所在地の隠匿のため非常に有効と考えられる。

 また、今回、朴正天が演習を「指導」したことで、同人の存在感が更に印象つけられたことになる。ただ、それがいつまで続くのかは、神のみぞ知るといったところであろう。

参考:3月25日のミサイル発射に関する北朝鮮報道(3月26日付け「労働新聞」)

「新たに開発した新型戦術誘導弾は、既に開発された戦術誘導弾の核心技術を利用して弾道重量を2.5トンに改良した武器体系」であり。2発を発射、「朝鮮東海上600㎞水域の設定された目標を正確に打撃」、試射の成功を通じて、「改良型固体燃料発動機(エンジン)の信頼性を確証し、既に別の誘導弾に適用している低高度滑空跳躍型飛行方式の変則的な軌道特性も再確証した」