rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

2021年9月15日 金予正談話を発表して文大統領の発言を非難(9月16日記)

 

 朝鮮中央通信は、9月15日午後、「金予正朝鮮労働党中央委員会副部長談話」(同日付け)を発表し、韓国・文在寅大統領が同日実施された同国のミサイル発射実験を視察した席で、「(こうした)ミサイル戦力は北韓の『挑発』を抑止するに十分である」と述べたことを非難した。

 同談話は、北朝鮮のミサイル開発について、「国防科学発展・武器体系開発5か年計画」に基づき推進する「正常的で自衛的な活動」であると主張した上で、「自分たち(韓国)の類似行動は平和を後押しするための正当な行動であり、我々(北朝鮮)の行動は平和を脅かす行動であると描写する非論理的で慣習的な蒙昧な態度に大きな遺憾を表する」と論難している。

 そして、そのような主張を繰り返すなら「北南関係は余地なく完全破壊へと進む」としつつ、「我々は、それを望まない」として、「言動に深思熟考」することを求めている。

 要するに同談話は、韓国が軍備開発を進めている以上、北朝鮮がそれを行うのは当然のことであり、自分の行いを棚に上げて、北朝鮮の行動を「挑発」呼ばわりするのは止めろという主張であろう。

 ある意味で一理ある主張であり、韓国内では、文政権の支持基盤も含めて、これに共感・同調する勢力が相当存在すると考えられる。また、南北関係の完全破壊について「望まない」と明言したことも注目される。

  そうして見ると、今次談話は、かつての毒々しい非難や揶揄に比較すると、「対韓非難」というよりは、「協調呼びかけ」に近い印象さえ受ける。

 なお、同談話は、16日付けの「労働新聞」には掲載されていないようである。そうしたソフト・ムードの対韓談話は、国内に周知するにはふさわしくないとの考えに基づくものともいえよう。