rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

2023年10月12日 全国での稲刈り完了を報道

 

 本日の「労働新聞」は、第1面に「今年の農事締めくくりのための闘争において果敢な実践力を発揮 全国的に昨年より1週間以上繰り上げて稲刈りを終えた」と題する記事を掲載した。

 同記事は、穀倉地帯である黄海南道平安北道などでの稲刈り取り組み状況を紹介した上で、「黄海北道咸鏡南道咸鏡北道をはじめとする他の地域でも・・稲刈りが成果裡に終わった」ことを報じている。また、稲の作況については、「党の賢明な領導の下、今年、例年に見ることの稀な良い作況が準備され(た)」と主張している。

 北朝鮮報道では、これまで、大麦・小麦やトウモロコシなどについても良好な作況、刈り入れの収束が報じられており、公式報道を見る限りでは、今年の「人民経済発展12個重要高地」の筆頭に掲げられた穀物生産は、概して順調であったとみられる。

 ただし、それが本当に「例年に見ることの稀」なほどの豊作であったのかというと、そこには疑問を呈さざるを得ない。そうした疑問の根拠となるのは、北朝鮮国内の市場における穀物価格が、収穫の進む秋になれば価格が下がるべきところ、むしろ逆に上昇していることである。例えば、「アジアプレス・ネットワーク」ホームページを見ると、今年の7~8月と9~10月の平均価格を比較すると、白米は約6,000ウォンから約6700~6800ウォンに、トウモロコシは約2,800ウォンから約3,200ウォンへと概して上昇基調にある。こうした趨勢は(具体的金額に差異はあるが)、韓国のソウル平壌ニュースが伝えるところとも符合する。こうした価格推移は、思惑による食糧の買い占め、退蔵なども作用しており、必ずしも、生産量をそのまま反映したものではないのかもしれないが、それにせよ、まれに見るほどの大豊作の中で起きる現象とは考えにくい。

 したがって、前述のような「豊作」報道については、とりわけ今年に入って以来、農業への力量集中を強く呼びかけてきた「党の賢明な領導」をアピールするために、不作であった昨年に比較すると良好であったという程度の作況を、過大に宣伝している可能性も考えておいたほうが良いと思われる。

 ちなみに、昨日の本ブログで紹介した「幻の重大報道」は、実は、この「稲刈り完了」であったところ、何かの理由で(我田引水に言えば、作況についての前述のような事情のために)、急遽、この程度の報道に「格下げ」されたのではないだろうか。まったくの憶測でしかないが。