rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

2023年11月23日 国防省「声明」を発し「9・19南北軍事合意」の無効化を表明

 

 

 本日の「労働新聞」は、第1面に22日の金正恩の国家航空宇宙技術総局平壌総合管制所訪問に関する記事(22日付け本ブログ参照)を掲載すると同時に、同記事の下部に、「『大韓民国』の連中は北南軍事分野合意書を破棄した責任から絶対に逃れられず、必ず高価な代償を払わなければならない」と題する「国防省声明」を掲載した。その骨子は、次のとおりである。

  • 「我々の偵察衛星の打ち上げは・・・自衛権に該当する措置であり、合法的かつ正当な主権行使である」にもかかわらず、「『大韓民国』の政治・軍事ごろは・・・合意書の一部条項の効力停止を発表した」
  • 党中央軍事委員会の委任によって、朝鮮民主主義人民共和国国防省は現在の事態に対処して、次のような原則的な立場を宣明する」
  • 「1:今この時刻から、わが軍隊は9・19北南軍事分野合意書に拘束されない」
  • 「2:北南軍事分野合意によって中止していた全ての軍事的措置を即時復活させる・・・軍事的緊張と衝突を防止するために取った軍事的措置を撤回し、軍事境界線地域により強力な武力と新型軍事装備を前進配備する」
  • 「3:北南間に取り返しのつかない衝突事態が発生する場合、全的に『大韓民国』の連中が責任を持つことになる・・・軍事境界線地域の情勢は・・・今日、収拾できない統制不能に置かれるようになった」
  • 「(こうした)軍事的緊張状態は・・・(我々の)核戦争抑止力強化と武力現代化事業の当為性と正当性を一層はっきり立証している」

 また、韓国軍によると、北朝鮮は、同声明発表に先立つ22日午後11時5分ころ、平安南道順安一帯から東(日本)海に向け弾道ミサイル(機種不詳)を発射したが、失敗したと推定される由である。

 こうした一連の行動は、いうまでもなく韓国による「9・19南北軍事合意」の効力一部停止決定に反発・対抗するためのものである。北朝鮮としては、韓国内における同「合意」の効力中止に向けた先般来の動向を韓国側からの意図的な「挑発」と受け止め、何よりも大切な「尊厳」保持のためにも、それに屈しない姿勢を示す必要を感じていると思われる。「声明」に示された表現(修辞)の激烈さは、そうした必要性に基づくものであろう。

 ただ、今後の軍事分界線付近における実際の行動においては、韓国側への「対抗」と同時に「状況の管理」にも相当の配慮を払っていくものと予測される。

 年末まで1月余りの現在、本年の「人民経済計画目標」達成に向け余念のない状況を勘案すると、北朝鮮指導部が、当面、昨日の弾道ミサイル発射の穴埋め程度の措置を大きく超えて、実際的な軍事衝突につながるような対応を想定しているとは考えにくい。

 むしろ、個人的に予測困難と感じるのは、韓国側の対応であり、北朝鮮のこうした「声明」を名目に、更に、「9・19南北軍事合意」の全面破棄といった方向に進む意向もうかがえる。どこまでエスカレートさせるつもりなのであろうか。来年の総選挙を視野に入れた「北風」狙いの行動と見るのは、下種の勘繰りであろうか。