rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

2024年2月1日 第1回党規律調査部門幹部講習会の開催を報道

 

 本日の「労働新聞」は、標記講習会が1月29日から31日までの間、開催されたことを報じる記事を掲載した。同講習会の概況は、次のとおりである。

  • 開催目的:「党規律調査部門幹部を再武装させ、党の政治活動を強い規律制度によって徹底して担保していくための対策を講じること」
  • 参加者:①崔竜海最高人民会議常任委員会委員長、②党中央検査委員会の委員、③党中央委員会当該部署の幹部、④道・市・郡党とそれと同じ機能を遂行する党委員会の責任幹部、規律調査部の幹部、⑤党幹部養成機関の幹部と教員・研究者、⑥国家検閲委員会当該部署の幹部
  • 「報告」(金哲三党中央委規律調査部長):金正恩の「党の規律建設に関する独創的な思想理論」を称揚の上、①「党組織と党幹部、党員の党規律遵守を制度的に確固として担保」、②「党規律問題の審議と取り扱いにおいて公正性を保障」、③「申訴請願処理事業を改善し党の領導的権威を保障し、党と人民大衆の一心団結をより強化」するための「活動において収めた成果と欠陥、現れた偏向と教訓が深く分析総括された」
  • 「実務講習」(講師不詳):①「(金正恩の)規律建設に関する思想を深く体得させるための講義」、②「規律調査部門幹部が高い責任性と原則性、強い気迫を持って事業を頑強に推進」、「あらゆる否定的現象と非妥協的に闘争する不屈の闘士、本当の意味の人民の守護者になる」、③「全党に規律監督体系、規律適用体系を厳格に立てる」、「規律監督調査事業を正しい方法論を持って制定された秩序通り実施し、党規律問題取り扱いにおいて公正性と厳格性を徹底して保障」などについて言及・解説
  • 講習会の成果:「参加者は、党規律建設において根本的な転換を起こすための斬新な方法論と妙術を習得し・・政治実務的資質と実践能力を積極的に培養した」

 以上の報道内容からは、同講習会が、党内の規律強化、とりわけ権力型の不正腐敗行為の根絶を主たる狙いとして、規律調査部門の活動を制度的・実務的に強化するためのものであったことがうかがわれる。

 同講習会が対象とした「規律」問題の範囲が党内にとどまるものではなく、国家機関等にも及ぶものであることは、同講習会の筆頭参加者が党の規律調査部門の責任者ではなく、崔竜海であったこと(最高人民会議常任委員会は、権力型不正腐敗対策などのため各地方に設置されている「遵法生活指導委員会」の活動を指導)、国家検閲委員会幹部も参加していることなどからもうかがえるところである。とりわけ、「報告」③の部分は、一般住民からの訴え(申訴請願:おそらく国家機関の不正腐敗なども含まれるのであろう)を適切に処理し、その不満解消を図ることによって、党の権威を維持しようとの狙いを端的に示している。

 なお、こうした講習会開催は、おそらく昨年末開催の党中央委第8期第9回全員会議の第5議案として、「現時期、党の領導的機能を強化するための一連の措置に関する問題」が取り上げられ(「報告」内容などは未公表)、「当該の決定書が全員賛成で採択された」ことを受けたものと考えられる。両者の関連性は、下線部の表現一致からもうかがえるところである。

 要するに、規律検査部門が各級の幹部に「忖度」して、権力型の不正腐敗行為を見逃したり曖昧に処理したりすることのないよう発破をかけるとともに、それを担保するような手続き面での制度的措置も講じたということと推測している。もちろん、その狙いは、「人民大衆第一主義」の具現化による人民の不満解消ないしは党への信任維持(回復?)にあるのであろう。