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主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

2022年10月18日 金正恩、党中央幹部学校を訪問、記念講義を実施

 

 本日の「労働新聞」は、金正恩が10月17日、党中央幹部学校を訪問し、学校関係者との記念写真撮影、校内視察などに続いて、「新時代の我が党建設方向と朝鮮労働党中央幹部学校の任務について」と題する記念講義を行ったことを伝える記事を掲載した。同訪問には、趙勇元、李日換、金在龍、全現哲、朴泰城(以上党秘書)、朱創日(宣伝扇動)部長が同行したとされる。

 記念講義の内容については、全文は掲載されず、記事中に要約して紹介(部分的に引用)する形で(とは言え、相当の分量を費やして)報じられている。その骨子は、次のとおりである。

1 過去10年間の党建設における成果

  • 総論:「社会主義執権党が領導の代を継ぐ時期に現れ得る混乱と陣痛を予防しつつ、必然的に提起される継承と発展の重大課題を革命的に解決することができた」
  • 各論①「思想と領導の唯一性を確固として固守し、継承」:「唯一的領導体系をより徹底して確立・・したことは、革命的党建設偉業を継承する上での根本問題を解決したもの」、「最近我が党は、党の唯一的領導体系を強化する事業に対する新たな定義と達成すべき目標を定式化し、全般的な党事業をその実現へと志向させている」
  • 各論②「領導的機能と役割を非常に高めた」:「重要党会議を定期的に稼働させる制度を復元し、その運営を改善」することにより「党と国家事業全般において統一性と契機性、力動性と徹底性を確固として保障」、「全党とすべての人民が党中央の提示した闘争課題を正確に知ることが出来るようにした」、党の各級組織の活性化、規律強化
  • 各論③「人民のため服務する革命的性格をより強化」:「金日成金正日主義の本質を人民大衆第一主義と定式化」、「勢道と官僚主義、不正腐敗行為、単位特殊化と税外負担行為を掃蕩するための戦争を宣布」「人民を賤視し人民の権益を侵害する反人民的行為が頭を上げられず抑制されており、全般的な幹部が多く覚醒するに至った」

2 今後の党建設の方向性

  • 総論:「党に対する人民大衆の信頼を厚くし、信用の礎石をより固めることが優先的で核心的な課題」
  • 各論①「政治建設」:「基本要求は、党中央の唯一領導体系を確立するための事業を新たな高みで深化させること」「需要なことは、全党を信念化された純潔な忠実性が支配するに至ること」、「各級党委員会が該当単位の最高指導機関、政治的参謀部としての機能と役割を正確に遂行」、党員の指導力発揮、「領導方法を不断に発展」(経験交流運動などに加え「全党的な立派な党風、全社会的な立派な風潮と雰囲気を主導」も)
  • 各論②「組織建設」:党隊列の精鋭化、群衆との事業強化(民心聴取など)
  • 各論③「思想建設」:党思想教養活動の内容刷新、活性化(「現代的な情報手段の積極的活用」「時代と大衆の意識変化に即して思想事業の形式と方法を改善」など)、「反社会主義、非社会主義的現象との闘争」と「あらゆる機会主義的で反革命的な思想傾向との非妥協的な闘争」の強化
  • 各論④「規律建設」:「全党的に自覚的な規律遵守気風と規律監督体系、規律適用体系を厳格に確立」
  • 各論⑤「作風建設」:「革命的で責任的な事業気風」の強化、「無責任性と保身主義、形式主義と要領主義・・(などの)思想観点と働きぶりを克服、「特別に注目し力を注ぐべき問題」として「人民に対する正しい観点と態度」の確立(=「人民を神聖視し、人民に献身的に服務することで人民の信頼を厚くし・・より高い目標を達成していくことが我が党の存在方式」、「良心的で清廉潔白な人間」「勢道と官僚主義、不正腐敗行為、税外負担行為(などを)・・断固として除去」

3 中央党学校の任務、今後の課題など

  • 幹部養成:「基本任務は、すべての学生を頭のてっぺんからつま先まで党中央の革命思想だけが流れ、党中央の革命思想を固く擁護貫徹する真の革命家、党の精粋分子として育成すること」、「きれいな良心で党中央を奉じ、いかなる環境の中でも党中央の思想と意図のとおりにのみ思考し行動する幹部」
  • 思想理論研究:「党の思想と理論を研究し、解釈宣伝する事業」、「新たに提示された路線と政策、闘争方針の正当性と科学性、生活力を論証し、解説する事業」
  • 教育内容、方法の革新:「教授内容を徹底して党政策と一環させる問題」など指摘、「教育形式と方法を改善」「教員陣営を質的に強化」
  • その他:「学校党委員会の機能と役割を決定的に向上」、「今後、大学の上の大学として押し立て、直接後援して・・すべての面で全国の大学の模範とする決心を披歴」

 以上のような講義内容の特徴と言えるのは、まず、党中央の唯一的領導の強化がこれまでの成果としても、また、今後の課題としても繰り返し強調されたことである。とりわけ、最近の動向として、「党の唯一的領導体系を強化する事業に対する新たな定義と達成すべき目標を定式化」したとされている点が注目される。このほか、この関連で、2015年2月の政治局拡大会議で「首領の教示貫徹で収めた成果と欠陥、経験を全面的に総括し、この事業をより深化させました」とも述べており、この時、何があったのか注目される。

 二番目の特徴点としては、成果としての「人民性」、課題としての「規律建設」ないし「作風建設」などとして、人民の信頼獲得の重要性強調と、それを阻害する官僚主義批判などが繰り返されている点をあげることができる。「成果」の部分でも「反人民的行為」について、「根絶」ではなく「抑圧」としていることから、潜在的には根強く残っていることを自認しているといえる。結局、「成果」としてあげたものの、なお道半ばということであろう。そして、それを改善しない限りは、人民の心からの信頼は獲得できず、人民の力に依拠した革命建設も円滑に進められないということを金正恩は自覚しているのであろう。