rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

2022年7月7日 党各級党委員会組織部党生活指導部門幹部特別講習会を開催

 

 本日の「労働新聞」は、標記講習会が7月2日から6日までの5日間にわたり、金正恩の「指導」の下、開催されたことを伝える記事を掲載した。

 同記事が伝える同講習会の概況は、次のとおりである。

  • 開催の狙い:全党と全社会に党中央の唯一的領導体系をより徹底して確立し、党隊列の組織思想的強固化をくまなく実現し、党の領導的機能と役割を非常に高める
  • 出席者:趙勇元組織秘書、李日換秘書、鄭慶沢軍総政治局長、党中央委組織指導部副部長たち、道、市。郡党委員会及びそれと同じ機能を遂行する党委員会、軍各級政治部の該当幹部たち
  • 主な日程:会議2日間(金正恩開講辞、趙勇元「報告」、「討論」、金正恩「結論」)+実務講習3日間+金正恩「閉講辞」
  • 金正恩「開講辞」の注目部分(金正恩発言は全文掲載ではなく、趣旨報道のみ。以下同):「党生活指導は党活動における基本であり、・・党員の党生活を指導する体系は・・党中央の基本領導線」、「党生活指導部門の事業が党中央の要求と意図に符合できないでいる実態とその原因を詳細に分析」「この部門幹部を再武装し、彼らの政治実務的資質と政治意識を向上させることは、今次特別講習会を組織した党中央の目的であり、我が党の強化において至急に解決すべき最も重要な核心問題」
  • 金正恩「結論」の注目部分:「党組織部門幹部の基本任務と党生活組織と指導において堅持すべき主要4大原則と6大課題を闡明」(具体的内容は明示せず)、「党生活指導部門は、該当地域、単位に対する党中央の領導を徹底して実現する中枢神経線となり、党組織を党政策貫徹へと巧みに徹底して組織発動する(べき)」、「党中央の領導を確固として保障することは、現時期、党生活指導部門の前に提起される基本任務」、「党員の政治意識を育て、彼らを党政策貫徹へと組織動員し、透徹した革命家として徹底して準備させることが党生活指導」、「すべての党組織が党中央の唯一的領導に絶対服従するように紀綱を立てることを党生活指導の根本鉄則とみなすべきと特別に強調」「幹部隊列をしっかり整え、幹部の事業方法と作風(執務姿勢)を徹底して改善」
  • 趙勇元「各級党委員会組織部党生活指導部門の事業総括報告」:「全党と全社会に金正恩同志の唯一的領導の下で一体となって動く鋼鉄のような組織規律を確立し、総秘書同志の革命思想で徹底して武装し、総秘書同志の独創的な新時代党建設思想と政治理念を完璧に、正確に、そして全面的に貫徹することが党の強化発展と社会主義建設の勝利的前進のための根本担保であると言明」
  • 討論:別途記事にて、各級党委員会組織部幹部の肩書を付した討論者25人の写真掲載(ただし、社会安全部員を除き軍人は一人も含まれず。軍人は掲載省略の可能性)
  • 実務講習の概要:「(金正恩の)結論で提示された思想と方針でしっかりと武装するための実務講習」との位置づけ。講義聴講のほか、「党会議運営方法と指導方法を示す特別編集物」(映画)視聴、「講義者と党事業実践において適される問題について多方面的な意見を交換、共有」などで、「政治実務的資質と実践能力を積極的に培養」
  • 金正恩「閉講辞」:「担当単位において党政策をどれだけ実質的に貫徹するかによって自分の党性と共に実力が評価されることを銘記し奮発」するよう訴え。

 以上のような同講習会に関する記事において、最も頻繁に繰り返されるのは、党中央(金正恩)の理念・政策の貫徹であり、唯一的領導体系の確立というのも、それと同義であろう。そして、その実現の中軸となるべきなのが、まさに「党生活指導」という活動であり、そうした機能・役割を十全に発揮させるためには、同活動担当部門幹部の資質向上が必須ということで、今次講習会が開催されたということのようである。

 ただし、その「党生活指導」という活動の進め方などについては、記事を見る限りでは、余り具体的には示されておらず、金正恩が提示したという「4大原則、6大課題」についても紹介がない。そこは、秘伝ということなのだろうか。

 いずれにせよ、党中央の指示貫徹をここまで強調する背景が注目される。

2022年7月6日 基幹工業部門の奮闘を督励

 

 本日の「労働新聞」は、「党中央委員会第8期第5回全員会議決定貫徹のための闘争において基幹工業部門が旗幟を掲げて進もう」との共通題目の下、基幹工業部門の生産正常化などを督励する評論、記事を集中的に掲載した。

  まず、総論としては、「経済全般の上昇を力強く先導しよう」と題する評論が、「基幹工業が立ち上がり先行してこそ全般的経済発展の活路が開かれる」として、「基幹工業部門のすべての単位が今年の課題をいかなることがあっても無条件に遂行しなければならない」と訴えている。そして、そのための鍵は科学技術にあるとして、「不足する原料と資材を解決する道も科学技術にあり、生産原価を低め、持続的発展の担保を整える妙術も科学技術にある」と主張している。

 次に、金属、化学工業に関しては、「自立経済の二本柱を盤石に立てる熱意を抱いて」と題する記事がある。同記事は、金属工業に関し、「金属工業省の幹部は、上半年期間、生産土台の整備補強事業を推進してきた過程を批判的に分析総括したことに基づき、現在進捗中にある主体化対象工事をより迫力をもって推進するための作戦と指揮を深化させている」としており、上半期の「主体化」に向けた整備補強事業が難航していることがうかがえる。また、化学工業に関しては、「化学工場、企業所において設備管理、技術管理を改善し、肥料と化学製品生産に必要な原料と燃料、動力保障を先行させる事業に優先的な力を注いでいる」としており、設備の整備以前に、その正常稼働のための原料、動力などの確保が問題になっていることがうかがえる。

 電力工業に関しては、「持続的な生産成長を担保して引き続き前進 電力工業部門において」と題する記事において、「多くの発電所において当面した生産計画を遂行し、より高く跳躍するための闘争が高潮している」と述べ、火力発電部門で「各地の発電所においては技能工の役割を高め、設備の正常稼働を保障しつつ、技術改造事業を並行させている」ことなどを紹介し、ここでも設備の「正常稼働」が最大の課題になっていることを示唆している。

 一方、「上半年計画を完遂した気勢で! 石炭、機械工業、鉄道運輸部門において」と題する記事では、石炭工業部門及び機械工業部門において、それぞれ「上半年計画を完遂した」と明記している。7月3日付けの本ブログで紹介した同日付け「労働新聞」の記事では、電力工業部門についてのみ上半年計画の完遂を明記していたが、本日の記事によると、それに石炭、機械工業部門も付け加える必要があることになる。

 最後に、「化学工業の新たな部門構造を備える上で適される重要な問題」と題する評論では、前掲記事を補うかのように、「国の核心工業である化学工業部門において主体化の旗幟高く部門構造を改善完備する闘争を果敢で実質的に推進するとき、経済部門の多くの単位において生産と整備補強事業がより活性化され、さらには5か年計画遂行のしっかりとした担保が整えられ得る」として、化学部門の「主体化」推進の重要性を訴えている。そして、そのための課題として、科学技術活用、人材育成を挙げた上で、「当面して、現在推進中にある主体化対象工事と諸化学工場、企業所の現代化事業をより迫力をもって推進することが重要である」と主張し、とりわけ、「炭素1化学工業創設をはじめとした主体化対象工事」に焦点をあてている。

 以上の一連の評論・記事からは、北朝鮮経済の全般的活性化のためには、金属・化学部門における「主体化」、すなわち原料等の国産化を可能にする生産態勢の確立が必須かつ最大の課題となっているが、実際には、その実現が難航していること、そして、多くの基幹工業部門では、原料、燃料等の調達困難のために、日々の生産目標達成に汲々としていることが改めてうかがえる。

 このような状況は、人民生活に直結する農業、軽工業を重視する先般来の政策傾向の中では、ある意味、やむをえない結果であるとも言え、当該部門勤労者の発奮を呼びかけるだけでは、なかなか打開は難しいと言わざるを得ないであろう。また、「科学技術活用」を訴えるのもいいが、それも魔法ではないことを理解するべきであろう。

 

2022年7月4日 論説「偉大な金正恩時代は我が人民の半万年の宿願が成就された栄光の時代である」

 

 標記論説は、冒頭で「敬愛する金正恩同志が我が革命を陣頭で導かれたときから10年の歳月が流れた」とした上で、同人のその間の業績を称賛するもので、その10年の意義を論じた「1」と金正恩の特質を論じた「2」から構成される。

 このうち「1」では、「10年が持つ巨大な意義」として、①「何よりも外勢の侵略と干渉策動を完全に終局的に清算することのできる物理的担保、絶対的力を準備したということ」と、②「また、我が人民が最上の享受する目覚ましい新時代の序幕を開いたということ」の2点を挙げている。なお、②については、「今、我が党は、農業と軽工業を飛躍的に発展させるための事業を革命的に、用意周到に実行している。(こうした)党政策が徹底して貫徹されれば、我が人民は食べ着て住むすべての面で世界が羨望する文明な生活を享受するであろう」と敷衍している。

 また、「2」では、そうした業績を上げた金正恩の「無限の力の源泉」などとして、「何よりも人民の宿願対する責任感、最後まで完成すべき強国建設偉業に対する責任感」、「人民に対する熱火のような愛と無限の献身」、「特出した領導実力」などを挙げている。

 同論説は、1ページでは収まらないほどの長文であるので、詳細は紹介しきれないが、特に注目される点をいくつか論じておきたい。

 第一に、「1」において、「10年」の成果として、核戦力を中核とする軍事力を念頭に置いたと思われる①が完了形の形で挙げられている一方、経済面での成果に関する②については、「序幕を開いた」に過ぎず、「(党政策が)貫徹されれば・・享受するであろう」として条件付きの展望でしかないことを明らかにしている点である。金正恩執権以来の成果の実情が端的に示されているといえる。

 第二は、基本的文脈からはややはずれるが、北朝鮮の強国化を望まず反対する勢力として、複数形での「列強」という表現が用いられていることである。すなわち、「1」①において、「他の国は絶対に自分よりも力が強くてはだめであり、対等であってもだめだというのが列強の共通する覇権意識である。したがって、列強は、自分たちの間にいかに深刻な矛盾と対立があっても、新興軍事強国として浮上する国に対しては互いに連合して抑圧している」と主張し、また、「2」においても、冒頭で、金日成金正日両人の業績を述べた上で、「富国強兵の大業を開拓することも苦難であるが、それを最後まで完遂していくことも、それに劣らず困難である」ことを主張する中で(この主張も、金正恩を先代に負けないものと位置付けるもので、それ自体、非常に興味深いものだが)、その理由として、「強国建設が力強く進捗するほど自らの覇権的地位を維持するための既存列強の挑戦と妨害策動がより強まって(いく)」ことをあげている。

 ここで、「列強」については、「自分たちの間にいかに深刻な矛盾と対立があっても」としていることから、いわゆるG7の西側先進国だけでなく、中国ないしロシアをも念頭においていることは間違いないであろう。結局のところ、こうした主張は、金正恩が西側のみならず中国などの反対・圧迫に抗して核ミサイル開発を進めてきたし、今後も進めていくということを物語るものといえよう。

 最後に、些細な点だが、なぜ、今日の時点で、金正恩が「革命を陣頭で導かれたときから10年」という論説が掲載されたのかということである。2012年の7月4日に何か重要な出来事があったのであろうか。管見の限り、公開された記念日などではないようだが。あるいは、今日の日付けには意味がなく、執権を開始した2012年から10年ということなのか、判然としない。後者であれば、今現在、その間の成果を(既に4月の「党、国家の最高職責への推戴10周年」に際してさんざん論じたにもかかわらず)こうした形で改めて大々的に称揚する必要があるということなのかもしれない。

2022年7月3日 本年度上半期計画遂行状況を報道

 

 本日の「労働新聞」は、紙面トップに「最悪の逆境を強勇に突破していく我が人民の力強い気勢 人民経済諸部門と単位で上半年計画を完遂」と題する記事を掲載した。

 同記事は、冒頭の総論部分で、「総合された資料によると、・・・金属、化学、電力、石炭、機械、建材工業をはじめとした人民経済諸部門の数多くの工場、企業所と各地地方工業工場において、上半年人民経済計画を完遂した」としている。

 しかし、それに続く各論部分では、電力工業部門について、「上半年電力生産計画を完遂した」としている以外、全体として「完遂」を明記された部門はなく、個別単位についても、「2・8ビナロン連合企業所、富嶺合金鉄工場をはじめとした化学、金属工業部門の諸単位において・・主要指標についての生産を計画通り進めた」としている以外は、計画完遂を明記された企業・工場はない。

 なお、同記事の構成は、産業部門別に計画遂行状況を紹介するいつものスタイルとは異なり、計画規律遵守、科学技術活用、内部予備の発見動員という、取り組み上の特徴別に、それに努めた単位を紹介する形となっている。上掲の「完遂」明記は、そのうちの計画規律遵守に関する部分での紹介である。他の部分では、そうした取り組みの結果について、生産を増大させたとかの表現にとどめ、計画完遂に至ったと明記した事例は見当たらない。

 こうした記事の形式自体、従前の「計画完遂・遂行」に焦点をあてるスタイルでは、余りに成果がみすぼらしいため、それを隠ぺいするための苦肉の策とも考えられる(考え過ぎかもしれないが)。

 こうして見ると、本年度の上半期経済計画の達成状況は、必ずしも芳しいものではない可能性が高いように思われる。ただし、そうした結果は、ある程度織り込み済みで、先の中央委第5回全員会議では、それを踏まえて、下半期でいかに挽回するかを討議・策定したとも考えられる。当局発表の統計を見る限り、コロナもある程度、収束の方向にあるようで、これから拍車をかけていくということであろう。

2022年7月1日 コロナウイルス蔓延経路を確認と発表

 

 本日の「労働新聞」は、「国家非常防疫司令部悪性ウイルスの我が国流入経路を科学的に解明」と題する朝鮮中央通信の記事を掲載した。

 同記事の骨子は、次のとおりである。

  • 国家非常防疫司令部は、6月30日、4月下旬以降の悪性ウイルス伝播経路に関する調査委員会(国家科学院生物工学分院、生物工学、ウイルス研究所、医学研究院、国家保衛省、社会安全省、中央検察所などの要員で構成)の調査結果を発表した。
  • 4月中旬頃、江原道金剛郡利浦地域から首都(平壌市)に上京した数名の者の中から発熱症状が現れ始め、彼らと接触した人の間で有熱者が急増。利浦地区でも有熱者が集団的に発生。当該時点まで、他の地域では、集団有熱者の発生は認められず。
  • このため利浦地区におけるウイルス流入過程を集中的に調査した結果、4月初め、利浦里の軍人(18歳)と幼稚園児(5歳)が、それぞれ兵営、住居付近の野山において、異色の物体と接触した事実を確認。両人は、いずれも悪性ウイルス感染症の初期症状を示し、抗体検査においても陽性と判定された。
  • 以上を総合して、金剛郡利浦地域に初めて悪性ウイルスが流入したものと判定、また、それが全国各地に同時多発的に伝播した経緯も分析された。
  • 国家非常防疫司令部は、こうした経緯を踏まえ、(軍事)分界沿線地域と国境地域において、風をはじめとした気象現象と風船に乗せられて飛来する異色の物体を警戒し、発見次第通報する全人民的な監視体系、申告体系を強化するなどの非常指示を発令する。

 以上の「調査」結果が真実であるか否かは、判断できないが、いずれにせよ、北朝鮮としては、今回のコロナ流入は、韓国からの飛来物(「異色の物体」。おそらくは風船で飛ばされた宣伝物)によるものと結論付けたことになる。

 今回の報道内容は、あくまでも「防疫学的」次元に徹した形で、韓国に対する言及・要求などは含まれていないが、今後、これを契機として、改めて韓国から北朝鮮に向けての宣伝ビラ等配布に対する抗議・対抗活動を行うのかが注目される。

 こうした発表を通じて、住民に対し、韓国からの飛来物に対する警戒心を植え付けることができたことは、かねてそれへの対応に腐心してきた北朝鮮当局にとっては、思わぬ成果であろう。

2022年6月30日 社説「党決定貫徹において無条件的な執行精神を高く発揮しよう」

 

 標記社説がいう「党決定」とは、さしあたり先の党中央委第8期第5回全員会議の決定を指しており、同社説は、その無条件貫徹を訴えるものである。

 社説は、冒頭で、「党中央委員会第8期第5回全員会議においては、党第8回大会決定貫徹においてカギとなる意義を持つ2022年度の主要党及び国家政策の執行実態が中間総括され、下半年度の事業方向と闘争方針が策定され、国家的な重大事業を強力で正確に推進するための実践行動方案が討議・対策された」としている。

 そして、それを「無条件的に執行」するための方法論に関して、①「党中央の賢明な領導があるが故に今年の戦闘の勝利は確定的であるとの信頼をより固く堅持しなければならない」、②「前世代(朝鮮戦争後の復興を成し遂げた世代)が発揮した闘争精神、闘争気風に積極的に従い学ばなければならない」、③「科学技術力向上に党決定貫徹の近道がある」、④「大衆の精神力を発動すれば、やり遂げられないことはない」と主張している。

 第5回全員会議の趣旨に関する「労働新聞」の論調については、6月17日および20日の本ブログでも紹介したところであるが、本日の社説も、その延長線上にあるものといえる。

 同会議の意義に関し、そこから得られる特徴を改めて挙げると、本年度課題の下半期における実践方法を具体的に策定することを狙いとしたものであったこと、その推進の梃としては、「党中央に対する信頼」の堅持と「前世代」を見習っての大衆の精神力発動、科学技術の活用が重要であること、といえよう。

 このうち、全員会議の狙い、党中央への信頼堅持、精神力重視部分は従前の繰り返しであり、一方、科学技術の活用と「前世代」を見習っての、という部分は本社説で初めて出てきた要素といえる。科学技術の活用はいわば当然の課題であり、「前世代」を見習ってというのもかねて繰り返されてきたレトリックである。

 結局、注目すべきは、下半期目標達成にカギとして、党中央への信頼堅持が繰り返されている点であり、逆読みすると、それが揺らいでいることが(勤労意欲の低下を招き)、目標達成の障害になっているということを意味するとも考えられる。

 そこまで言うのは極端な解釈であるのかもしれないが、いずれにせよ、当面の計画実現において、大衆の勤労意欲引き出しが最大の課題となっていることは間違いないであろう。

 それと、余談であるが、当面の目標について、「経済」という言葉が一切用いられず、「党及び国家政策」とか「重要国家事業」と言った表現になっていることが気になる。「国防建設」が念頭に置かれているのであろうか。少なくとも、「経済建設」だけが目標ではないということであろう。

2022年6月28日 党中央委員会秘書局拡大会議を開催

 

 本日の「労働新聞」は、6月27日、標記会議が金正恩の「指導」の下、秘書局メンバーの出席に加え、党中央委の「該当部署部長たちと組織指導部第1副部長、副部長たちが傍聴」して、開催されたことを伝える記事を掲載した。なお、韓国聯合通信によると、報道写真に写っていた会議場の時計から、同会議の開催時間は、約3時間と推測される由である。

 同記事が伝える主な討議事項は、次のとおりである。

  • 各級党指導機関の事業体系を改善整備し、政治活動を強化する問題
  • 党中央委の一部部署機構を改める問題
  • 各道党委員会事業に対する指導・援助強化のための新たな体系を設ける問題
  • 党総務事業規定と機要(秘密の意)管理体系を改善する問題
  • 保衛・安全・司法・検察部門事業に対する政策的指導を強化し、当面、本年必要な事業を組織遂行する問題
  • 各級党組織幹部の政治実務的資質と事業能力を高めるための新たな学習制度を樹立する問題
  • 全党的に勤労団体(に対する指導)事業を重視し強化する問題

 更に、金正恩が「党中央委員会部署の任務と当面課題」と「全党的に党政治活動において堅持すべき主要原則と課題と方途」について「結論」を述べたという。

 今次会議は、上述のとおり討議事項が多岐にわたっており、そのテーマが判然としないが、注目されるのは、党による「政治活動」とか「政策的指導」との言葉が繰り返されている点である。私の個人的印象では(間違っているかもしれないが)、党の「政治活動」というのは、具体的に言えば、当該党組織が属する単位(例えば、企業所とか行政機関など)が上部から与えられた目標に即して、その達成方法(作業分担、責任者、目標時期、総括方法など)に関する具体的な計画を樹立した上で、当該計画の実現に向け、随時、その取組・進捗状況を点検・督励し、問題が生じた場合はあい路の発見、打開に努め、必要に応じて補完策を講じるなどして、最終的に当該単位がその目標を実現できるように指導する活動を意味する。

 今次会議は、総じて言えば、そうした党の機能・役割を中央においても、地方においてもこれまで以上に効果的に発揮させるための制度的な対策(幹部の意資向上も含めて)を講じるためのものであったのではないだろうか。

 なお、「保衛・安全・司法・検察部門」への指導強化が挙げられているのは、コロナの国内蔓延過程を通じて、その職務執行に問題が認められたことと関連があるのではないだろうか。コロナの国内発生が報じられた直後の5月15日に開催された党中央委政治局非常協議会において、金正恩が当時深刻化していた薬品の供給・流通上の問題に関し、「司法。検察部門が・・法的監視と統制をまともにできないでいる」ことを指摘し、「中央検察所所長の職務放棄、職務怠慢行為を辛辣に叱責」したことが報じられたことがあった。そうした状況に鑑みると同時に、前回の秘書局会議で討議された党内の紀綱確立、不正腐敗の剔抉などへの側面的貢献という期待も込めて、これら機関に本来の役割を十全に発揮させるべく党による指導を強化しようとしているのであろう。