rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

2022年6月30日 社説「党決定貫徹において無条件的な執行精神を高く発揮しよう」

 

 標記社説がいう「党決定」とは、さしあたり先の党中央委第8期第5回全員会議の決定を指しており、同社説は、その無条件貫徹を訴えるものである。

 社説は、冒頭で、「党中央委員会第8期第5回全員会議においては、党第8回大会決定貫徹においてカギとなる意義を持つ2022年度の主要党及び国家政策の執行実態が中間総括され、下半年度の事業方向と闘争方針が策定され、国家的な重大事業を強力で正確に推進するための実践行動方案が討議・対策された」としている。

 そして、それを「無条件的に執行」するための方法論に関して、①「党中央の賢明な領導があるが故に今年の戦闘の勝利は確定的であるとの信頼をより固く堅持しなければならない」、②「前世代(朝鮮戦争後の復興を成し遂げた世代)が発揮した闘争精神、闘争気風に積極的に従い学ばなければならない」、③「科学技術力向上に党決定貫徹の近道がある」、④「大衆の精神力を発動すれば、やり遂げられないことはない」と主張している。

 第5回全員会議の趣旨に関する「労働新聞」の論調については、6月17日および20日の本ブログでも紹介したところであるが、本日の社説も、その延長線上にあるものといえる。

 同会議の意義に関し、そこから得られる特徴を改めて挙げると、本年度課題の下半期における実践方法を具体的に策定することを狙いとしたものであったこと、その推進の梃としては、「党中央に対する信頼」の堅持と「前世代」を見習っての大衆の精神力発動、科学技術の活用が重要であること、といえよう。

 このうち、全員会議の狙い、党中央への信頼堅持、精神力重視部分は従前の繰り返しであり、一方、科学技術の活用と「前世代」を見習っての、という部分は本社説で初めて出てきた要素といえる。科学技術の活用はいわば当然の課題であり、「前世代」を見習ってというのもかねて繰り返されてきたレトリックである。

 結局、注目すべきは、下半期目標達成にカギとして、党中央への信頼堅持が繰り返されている点であり、逆読みすると、それが揺らいでいることが(勤労意欲の低下を招き)、目標達成の障害になっているということを意味するとも考えられる。

 そこまで言うのは極端な解釈であるのかもしれないが、いずれにせよ、当面の計画実現において、大衆の勤労意欲引き出しが最大の課題となっていることは間違いないであろう。

 それと、余談であるが、当面の目標について、「経済」という言葉が一切用いられず、「党及び国家政策」とか「重要国家事業」と言った表現になっていることが気になる。「国防建設」が念頭に置かれているのであろうか。少なくとも、「経済建設」だけが目標ではないということであろう。