rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

2022年7月6日 基幹工業部門の奮闘を督励

 

 本日の「労働新聞」は、「党中央委員会第8期第5回全員会議決定貫徹のための闘争において基幹工業部門が旗幟を掲げて進もう」との共通題目の下、基幹工業部門の生産正常化などを督励する評論、記事を集中的に掲載した。

  まず、総論としては、「経済全般の上昇を力強く先導しよう」と題する評論が、「基幹工業が立ち上がり先行してこそ全般的経済発展の活路が開かれる」として、「基幹工業部門のすべての単位が今年の課題をいかなることがあっても無条件に遂行しなければならない」と訴えている。そして、そのための鍵は科学技術にあるとして、「不足する原料と資材を解決する道も科学技術にあり、生産原価を低め、持続的発展の担保を整える妙術も科学技術にある」と主張している。

 次に、金属、化学工業に関しては、「自立経済の二本柱を盤石に立てる熱意を抱いて」と題する記事がある。同記事は、金属工業に関し、「金属工業省の幹部は、上半年期間、生産土台の整備補強事業を推進してきた過程を批判的に分析総括したことに基づき、現在進捗中にある主体化対象工事をより迫力をもって推進するための作戦と指揮を深化させている」としており、上半期の「主体化」に向けた整備補強事業が難航していることがうかがえる。また、化学工業に関しては、「化学工場、企業所において設備管理、技術管理を改善し、肥料と化学製品生産に必要な原料と燃料、動力保障を先行させる事業に優先的な力を注いでいる」としており、設備の整備以前に、その正常稼働のための原料、動力などの確保が問題になっていることがうかがえる。

 電力工業に関しては、「持続的な生産成長を担保して引き続き前進 電力工業部門において」と題する記事において、「多くの発電所において当面した生産計画を遂行し、より高く跳躍するための闘争が高潮している」と述べ、火力発電部門で「各地の発電所においては技能工の役割を高め、設備の正常稼働を保障しつつ、技術改造事業を並行させている」ことなどを紹介し、ここでも設備の「正常稼働」が最大の課題になっていることを示唆している。

 一方、「上半年計画を完遂した気勢で! 石炭、機械工業、鉄道運輸部門において」と題する記事では、石炭工業部門及び機械工業部門において、それぞれ「上半年計画を完遂した」と明記している。7月3日付けの本ブログで紹介した同日付け「労働新聞」の記事では、電力工業部門についてのみ上半年計画の完遂を明記していたが、本日の記事によると、それに石炭、機械工業部門も付け加える必要があることになる。

 最後に、「化学工業の新たな部門構造を備える上で適される重要な問題」と題する評論では、前掲記事を補うかのように、「国の核心工業である化学工業部門において主体化の旗幟高く部門構造を改善完備する闘争を果敢で実質的に推進するとき、経済部門の多くの単位において生産と整備補強事業がより活性化され、さらには5か年計画遂行のしっかりとした担保が整えられ得る」として、化学部門の「主体化」推進の重要性を訴えている。そして、そのための課題として、科学技術活用、人材育成を挙げた上で、「当面して、現在推進中にある主体化対象工事と諸化学工場、企業所の現代化事業をより迫力をもって推進することが重要である」と主張し、とりわけ、「炭素1化学工業創設をはじめとした主体化対象工事」に焦点をあてている。

 以上の一連の評論・記事からは、北朝鮮経済の全般的活性化のためには、金属・化学部門における「主体化」、すなわち原料等の国産化を可能にする生産態勢の確立が必須かつ最大の課題となっているが、実際には、その実現が難航していること、そして、多くの基幹工業部門では、原料、燃料等の調達困難のために、日々の生産目標達成に汲々としていることが改めてうかがえる。

 このような状況は、人民生活に直結する農業、軽工業を重視する先般来の政策傾向の中では、ある意味、やむをえない結果であるとも言え、当該部門勤労者の発奮を呼びかけるだけでは、なかなか打開は難しいと言わざるを得ないであろう。また、「科学技術活用」を訴えるのもいいが、それも魔法ではないことを理解するべきであろう。