rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

2021年10月19日 記事「再資源化技術経験発表会が与えた余韻」

 

 標記記事は、「再資源化技術経験発表会」に関するものである。

 同発表会については、10月2日付け「労働新聞」にこれを報じる記事が掲載されており、それによると、去る9月27日から10月1日までの間、朝鮮科学技術総連盟中央委員会の主催で、「画像会議体系」により開催された。目的は、「原料、資材の国産化再資源化を実現することに関する党政策貫徹において収めた科学技術成果と経験を広く普及一般化すること」とされ、「国家科学院、江界農林大学、金正淑平壌製糸工場、沙里院紡績工場、殷律鉱山をはじめとした70余単位の幹部・科学者・技術者・教員・3大革命小組員などが参加」し、「軽工業、農業、化学、建材、食料、日用分科に分かれて進行」され、「150余件の提案が提出」されたという。提案の具体的な例としては、「古布と破綿で布地を生産」とか「落花生の皮を利用して家畜用配合飼料を生産」などがあげられていた。

 本日の記事は、その発表会に対して、かなり辛辣な批判を加えたものである。すなわち、一定の肯定的効果があったことを認めた上で、「残念な点もあった。このたびの発表会に金属、化学をはじめとした人民経済重要部門において切実に必要な原料、資材を解決する上で助けとなる重みがある相当の提案が出されなかったことである」「出品された提案の中には価値があると評価されるものが多くないとの事実を見ても、再資源化事業が相当の水準で科学技術的に進められないでいるということを知ることができる」としている。

 記事は、そうした現状を踏まえて、「このような意味から見るとき、このたびの再資源化技術経験発表会が科学者、技術者たちに残した余韻は大きい」と結んでいる。

 同記事で注目されるのは、単にこの発表会の内容が貧弱であったことのみならず、現下の重要施策である「再資源化」に対する取り組みが足踏み状態にあること、とりわけ金属、化学などの重要工業部門における取り組みが出遅れていることを指摘していることである。確かに、2日の記事で紹介された発表会の参加単位を見ても、そうした傾向がうかがえる。また、工業部門の最高学府である金策工業大学などメジャーな学術・研究機関の名前もない。

 あるいは、「再資源化」に対しては、軽工業部門など、かねて国家的バックアップが弱かった部門では懸命の取り組みがなされている一方、重化学部門など優先的配分を受けていた部門では、いまだ昔の気風から抜け切れず、本腰を入れた取り組みがなされてないとも考えられる。

 金正恩の示す方針(この場合であれば「自力更生」)の実践に向けた献身・奮闘が繰り返し強調されている背景には、そうした一種の「サボタージュ」現象が存在するのかもしれない。