rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

2021年10月20日 新型SLBMの発射実験を実施

 

 本日の「労働新聞」は、「朝鮮民主主義人民共和国国防科学院、新型潜水艦発射弾道弾試験発射実施」と題する朝鮮中央通信の記事を掲載した。

 同記事によると、19日に実施された同試射は、党中央委員会軍需工業部の劉進部長、金正植副部長及び国防科学院指導幹部が指導し、5年前に初めてSLBM試射を実施した「8・24英雄艦」において行われ、その成功は「党中央」に報告されたという。

 また、今次発射されたミサイルについては、「側面機動及び滑空跳躍機動をはじめとした多くの深化した操縦誘導技術が導入された新型」と説明し、「国の国防技術高度化と我が国海軍の水中作戦能力向上に大きく貢献する」と自賛している。

 同記事には、水中から発射され空中を飛翔するミサイルの写真4枚と水中から浮上する潜水艦の写真1枚が付されている。 

 同報道を信じれば、今次発射されたのは、上下左右に誘導可能な複雑な経路を飛行する能力を持ったミサイルのようで、単純な弾道経路で飛来するものに比して迎撃を困難にする効果が期待できるのであろう。これまでの別のミサイル試射の報道などから勘案して、北朝鮮は、こうした複雑な飛行経路を可能にする機動・操縦技術を開発し、それを各種のミサイルに次々に応用しているように思える。

 ただ、換言すると、今次発射されたミサイルは、先般の軍事パレードで初登場し注目を集めた新型ミサイルではなく、また、かねて建造中とみられていた大型潜水艦から発射されたものでもない、ということである。それらのデビューがいつ行われるのか、それが今後の注目点といえよう。

 ところで、余談であるが、国内の報道によると、今次ミサイル発射に関して、東京に総理、官房長官が不在であったことが危機管理上問題があるとかないとかが議論され、総理は予定を変更して帰京したというが、どうしてそれほど大騒ぎをする必要があるのかまったく理解できない。こうしたことで総理の動向が左右されれば、それは結局、北朝鮮の影響力に服することになるのではないだろうか。それは、結果として、北朝鮮のこうした行為を通じた外交力(発信力)を増幅させることにも通じるであろう。

 北朝鮮に恫喝されて、ミサイル発射の際にこれまで使ってきた「挑発」の表現を差し控えるにいたった韓国の対応も誠に情けないが、無用に騒ぎ立てる日本の対応も余りほめられたものではないといわざるをえない。

 なお、私は、以前から、北朝鮮のミサイル発射などに対して、「挑発」と呼ぶことについては、その言葉の本来の意味(=相手の攻撃を誘おうとの目的による行動)からして、北朝鮮の意図とは明らかに異なる(米韓の攻撃を欲しているわけではなく、むしろ牽制・抑止するための行動)と考えていた。したがって、その言葉を使わないこと自体は結構なことだと思うが、北朝鮮に言われて止めるというのは、やはり情けないとしかいいようがない。