rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

2021年7月7日 「地方工業の実際的な発展を志向して 平安南道にて」

 

 標記記事は、現在、「人民生活」安定が喫緊の最重要課題とされていることを踏まえて、その実現のカギとされる地方工業の振興策の具体的内容をうかがわせるものである。

 平安南道の実情を紹介する同記事によると、中央委員会全員会議の決定などを踏まえて、「道では、地方工業工場の実態を具体的に了解分析し、科学的で現実性ある発展戦略を立てた」という。ここまでは素晴らしいが、その具体的内容を見ると、まず掲げられるのは、「(道内の)市、郡では、自分の地方の特性に即した油性作物(ヒマワリなど)を多く植え、施肥管理を責任的に行う」ことである。

 次が、「これまで使われずに捨てられていた排泄物(廃棄物の意)を利用して、生産活性化」を図ること、そのために「再資源化において先進的な単位の経験を広く紹介宣伝し一般化している」という。その例としては、「紙工場に破紙(古紙のことであろう)を正常的に保障する整然とした体形を立て」たとか、「木材加工の副産物により様々な種類の製品を作っている」などの取り組みが挙げられている。

 更に、こうした「原料、資材保障問題とともに生産工程の現代化も一緒に推進」しているというが、ここでいう「現代化」とは、「自らの技術力量を強化して懸案問題を解決する」もので、例えば、「食糧工場では、多くの設備を自力で製作設置」したり、「樹脂管生産設備をより完備するための事業(を行って)・・各種規格の樹脂管を生産できる土台を整備」したりといった内容である。

 要するに、人民生活安定に向けた人民消費品の生産は、現代工業というよりは、手作りに近い形で進められ、その増産(というよりは安定供給が当面の目標か)は、現場の涙ぐましい努力に託されているということであろう。

 これが、金正恩が「有難い、偉大な人民」のために講じている施策の実情である。