rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

11月9日 論説「真っ向から立ち向かう攻撃精神で革命を導かれる傑出した領導者」

 

 金正恩を称賛する長文の論説が掲載された。北朝鮮指導部の自己認識ないしは国民に金正恩がどのような面で偉大であると認識させようとしているのか、についての方針をうかがわせるものとして紹介したい。

 論説は、「1」と「2」から構成されているが、「1」では、金正恩の偉大性を三つの側面から説明している。

 第一は、「直面する試練を強行突破」する「攻撃型の偉人」というもので、主に外交・安保面での特徴を示したものと思われる。もう少し敷衍すると、彼は「真っ向から立ち向かう闘争方式で国と人民の尊厳と安全を固く守っていかれる正義の守護者」であり、「国家の尊厳守護戦、人民の運命守護戦において一寸の譲歩もなく固く真っ向から立ち向かっていく」のは「(金正恩の)領導の特有の特徴」と主張している。

 第二は、「真っ向から立ち向かう闘争方法で経済建設大進軍を勝利へと導いていかれる創造の英才」というもので、経済面での指導に関するものである。そこでは、「(金正恩の)攻撃方式は、綿密な打算に基づき最大限の実利を保障しつつ、最大限の速度で走れるようにする科学的な闘争方式」であると主張している。

 第三は、「真っ向から立ち向かう闘争方式で富強祖国の燦爛たる未来を促進する絶世の愛国者」というもので、その政策の長期的展望性を称賛している。

 「2」では、そのような闘争方式を裏付けるものとして、金正恩の「主体思想の正当性に対する確固たる信念」と「我が人民に対する絶対的な信頼」をあげている。

 要するに、金正恩の指導の特徴としてこの論説が主張したいのは、いかなる困難な環境・条件にもひるまず、緻密かつ遠大な計略の下、それに大胆かつ粘り強く立ち向かっていくという姿勢であろう。そして、そのような姿勢を支える原動力は、北朝鮮の従前からの基本理念に対する確信と「人民の力」すなわち「自力更生」によってなにごとも成し遂げ得るとの自信であるということであろう。また、その目指すところとしては、「国の尊厳守護」と「富強祖国の燦爛たる未来」が掲げられていることも注目される。

 本論説は、間もなく8年に達する金正恩の執権以来の「実績」を踏まえ、かつ総括したものと考えられる。自画自賛と言ってしまえばそれまでだが、金正恩の路線・政策の特徴をある意味でよく表現しているようにも思える。そして、それは、回顧にとどまらず、今後の路線・政策を予測する上でも重要なヒントになるのではないだろうか。

 なお、「1」の第一の部分での「(金正恩の)領導の特有の特徴」との表現には、先代の指導者達との違いを際立たせる意味が込められているようにも見えるが考え過ぎであろうか。先代達との関係をめぐる問題については、先日の金剛山での「先任者批判」などの動きもあり、引き続き注視していきたい。