rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

2021年10月22日 論説「運命も未来もみな引き受け守ってくださる偉大な親を首領として奉じる人民の栄光、限りない」(10月23日記)

 

 10月21日の社説は、金正恩の権威高揚に向けた思想活動強化を呼びかけたものであったが、標記論説は、早速、それを実践して、金正恩の偉大性を力説するものとなっている。

 まず、「革命の傑出した首領であり、人民の偉大な親であらせられる敬愛する金正恩同志を高く奉じて今日我が人民の矜持と自負心は最絶頂に達している」と主張し、金正恩を次のように様々な角度から称賛する。

・「歴史のあらゆる挑戦から我が人民の運命を最後まで守って下さる偉大な守護者」

・「我が人民を無限に神聖視され彼らの皮膚に社会主義の恵沢が一つでも多く及ぶようにするため不眠不休の労苦を捧げていかれる偉大な親」

・「人民の将来にまで責任を負い立派に育てていかれる偉大な開拓者」

 その上で、そうした首領を奉じる人民の側に目を転じて、「受け取った愛と恩徳に報答を伴わせるのは人間の当然の道理である。自分を守ってくれ、抱いてくれ、押し立ててくれ、導いてくれる偉大な親の大きな愛に対し、涙でも流し万歳を叫ぶこと(だけ)ができ報答することができないのであれば、それより更に背恩忘徳なことはない」として、受けた「恩徳」に対する実際的な「報答」の義務を強調する。

 そして、結論として、「敬愛する総秘書同志を革命の偉大な首領として高く奉じた大きな矜持と自負心にあふれる我が人民は党大会決定貫徹のための今日の闘争において精神力の強者、不可能を知らない偉勲の創造者として価値の高い生を営んでいくであろう」として、当面の課題貫徹への献身を呼びかけている。

 以上のような主張に特段の新味はないが、興味深いのは、涙を流したり万歳を叫んだりするだけでは「背恩忘徳」になると主張していることである。ここから推測すると、今の北朝鮮で、金正恩に対し「万歳」を叫ばない人はいないということがうかがえる。つまり、問題になっているのは、そうした表面的な「忠誠」「服従」ではなく、実際にその指導、方針に従って成果を上げるために懸命に努力をしているのか否かということであろう。

 ただ、そうした点を問題にし、その改善を求めるのであれば、前述のような個人崇拝的美辞麗句を列挙することが、その解決策として本当に効果的なのかということが問われるべきであろう。率直に言って、それをいくら続けても、むしろ、「面従腹背」的姿勢を強めるだけではないのだろうか。そういう意味で、北朝鮮は、袋小路に入り込んでいるといえるかもしれない。