rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

2021年6月3日 続く金正恩「首領」化言説

 

 標記に関しては、5月31日付け論説で最終段階に達したことを紹介したが、その後も関連の論調が掲載されているので、概要を整理しておきたい。

 まず、昨日6月2日に掲載の評論「忠実性に基づく同志的関係」は、首領の役割について、「首領は、人民大衆の最高脳髄であり、統一団結の唯一の中心である。脳髄を離れて人の生命活動について考えられないように、首領を離れては社会政治的集団の存在と活動について考えることができない」と強調する。そして、北朝鮮の現状に関し、「首領に対する忠実性に基づきすべての社会成員が革命的義理と同志愛で結束しているために我々の革命陣地が必勝腐敗であり、我々式社会主義が連戦連勝しているのである」とした上で、「今日、我が人民は敬愛する総秘書同志の周囲に固く結集し党中央の領導を忠実に奉じて進んでいる。首領と人民が政治思想的に、道徳義理的に固く結集した我が革命隊伍の統一団結は、この世の中で最も堅固なものである」として、首領と金正恩をまったく同じ意味で用いている。

 また、本日(3日)掲載の評論「千万の心臓に沸きあふれる尽きることのない魅惑と欽慕」も、金正恩に対する人民の「魅惑と欽慕」について具体事例などを挙げて縷々論じた上で、「人民に対する首領の信頼と愛、首領に対する人民の熱火のような魅惑と欽慕に基づく偉大な渾然一体の力により我が革命は永遠に連戦連勝するであろう。今日も明日も我が人民は、敬愛する金正恩同志と最後まで生死運命を共にするであろう!」として、前掲評論と同様、首領と金正恩を同義に用いている。

 ただし、そのような流れとはやや整合性を欠くともみられる論調が存在することも指摘しておきたい。それは、2日付けの評論「3大革命路線は永遠の百勝の旗幟」である。同評論は、「3大革命赤旗獲得運動は、全社会を金日成金正日主義化することについての我が党の最高綱領を直接闘争スローガンとして提起している最も高い形態の運動であり、全国すべての人民が参加する全人民的大衆運動である」、「歴史と現実は、社会主義建設のすべての分野において絶え間ない飛躍と革新を起こしていく上で3大革命赤旗獲得運動ほど実効が大きく威力ある運動はないということを実証してくれている」などと主張して、同運動に引き続き邁進すべきことを訴えるものである。

 これだけ読めば、金正恩の権威高揚ないし指導権強化のための論調のようにもみえるが、最近、金正恩「首領」化言説と一体となすかのように、同人の主唱とされる「真似て先に立つ、真似て学ぶ、経験交流運動」が「新たな大衆運動」として展開されはじめたこと(5月10日付け本ブログ参照)を勘案すると、その意味合いは随分と異なったもの(端的に言えば、金正恩の名前を掲げて、金正恩の動きに抵抗するもの)にも解釈できる。もちろん、「真似て・・運動」なるものの趣旨がいまだ判然とせず、「3大革命赤旗獲得運動」に代替するものとして提起されたと断言できない以上、同論評にそうした「不整合性」を読み取るのは深読みのし過ぎである可能性もある。ここは即断を避けつつ、推移を慎重に見極めていきたい。