rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

4月8日 評論「人民経済発展における数字(デジタル)経済の役割」

 

 標記評論は、まず「数字経済」の意味を「経済生活のすべての契機と経済管理が数字化された知識と情報を核心要素として、情報通信技術と情報網を推進力として発展する経済」と説明する。

 その上で、その具体的内容について、「数字経済の本質は、情報技術と数字技術の結合に基づく経済の情報化である。・・ここには、情報技術の産業化、経済下部構造の情報化、既存産業部門の情報化、生活方式の情報化などが含まれる」として、各分野・次元での「情報化」との一体性を強調している。

 そして、「数字経済」のもたらす効用について、次の5点をあげている。

 第一は、「強力な知識経済の下部構造構築において決定的役割を果たす」ことである。その趣旨は、知識経済特有の下部構造である「情報通信網と資料基地(データベースの意味か)」が「新たに構築されるだけでなく、既存の下部構造(交通網など)が高度に現代化、情報化される」ことである。

 第二は、「自立経済を支える主要工業部門の現代化、情報化を力強く推進し、これら部門が高い生産力を備えるようにする」ことである。すなわち「数字経済の発展による主要工業部門と情報通信網の全面的な結合は、・・・人材、技術、資金、物資配置の最適化を実現し、すべての工業部門が節約型産業へと移行するよう積極的に推進する」と主張している。

 第三は、「人民経済の質的発展のための核心的動力としての役割を果たす」ことである。ここで「人民経済の質的発展」の具体的内容としては、「先端科学技術に基づく新たな技術集約型企業の創設」「既存産業部門の数字化形態転換により・・・生産物の質が高まる」「新たな社会的生産組織方式と業務形態が不断に出現」することなどがあげられている。ここには、「ニュー・エコノミー」的発想が色濃く盛り込まれていることが注目される。

 第四は、「緑色産業の創設と発展」を推進することである。「緑色産業」とは、省エネ・環境保護などにかかわる産業を指すものと思われる。

 第五は、「現実的要求に合うよう我々式経済管理方法を具現し、国の経済成長を積極的に推進する」ことである。すなわち「国家の経済指導管理から企業体の経営管理に至るまで経済管理全般を時代と現実の要求に合うよう改善強化」することにつながるという。

 同評論は、「経営戦略を正しく立て、企業管理を主動的に、創発的に行っていこう」との共通タイトルの下、次のような記事と共に掲載されたものである。

・「少ない投資で最大限の実利を 南徳青年炭鉱幹部たちの事業において」

・「原価低下を最優先して 2.8ビナロン連合企業所において」

・「労働に対する評価と分配をいかに行ったか 温泉大聖食料工場において」

 上掲の「数字経済」に関する評論からは、国際的な情報化・知識化の時代的趨勢に即して、伝統的な重厚長大型産業構造を大きく転換していこうとの強い意欲がうかがえる。また共通タイトルにみられる「経営戦略」という言葉にも隔世の感を禁じ得ない。昨日の本ブログで紹介した「技術貿易奉仕体系『自強力』」の開発・運用なども、そのような方向性に即した動きの一つといえる。

 北朝鮮経済には、従前の在り方と変わらない、ないしそれを固守・復元しようとする部分と、前述のような大きな転換を目指し確実に動き始めている部分が併存するように思われる。どちらかに偏することなく、それぞれの動きをしっかりと見極めていくことが重要であろう。