rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

2021年3月20日 社説「人材管理、人材育成事業を革新して発展と繁栄の活路を開いていこう」

 

 3月17日の本ブログで紹介したとおり、現在、北朝鮮では、人材育成が「今年の経済事業の中心」をなす4本柱の一つにあげられるほど重視されている。標記社説は、それへの取り組みを訴えたものである。

 まず、いかなる「人材」の育成を目指すのかについて、「各分野の科学技術人材だけでなく、着想力と組織展開力、掌握力が優秀な経営人材、管理人材、人との事業を巧みに行うことのできる党幹部を大々的に養成する」との「人材育成戦略」を明らかにしている。

 その上で、その推進のための課題として、「何よりも党の人材管理、人材育成方針を思想的に接受し、その貫徹に革命的に取り組む」ことを求める。すなわち、「科学技術人材、行政幹部、党幹部を育てる事業を党大会決定貫徹のための重要な政治的問題、単位発展の死活的な要求として打ち立て、いかなる条件と環境の中でも敢行」していくことが必要という。

 次に、「国家の統一的で戦略的な指導の下で人材管理、人材育成事業を深化」させることを求めている。具体的には、「社会的建設に必要な人材類型を正しく定め、人材育成目標を具体的に立て、要求される部門別、地域別人材需要を正確に打算することに基づき、人材を展望的に科学的に養成」することを訴え、「人材育成のためには投資を惜しんではならない」とも主張している。

 また、人材育成を担う主体については、教育部門、科学研究機関の役割を強調するとともに、「(それら機関だけでなく)人民経済のすべての部門において自らの部門、自らの単位に必要な人材は自体で育てるとの原則で(人材育成)事業を周到精密に計画実施」していくことを求めている。

 更に、人材育成の方向性について、具体的に「旧態依然として陳腐なものを打破し、新たな出発をしようとするなら、新型の人材を育てなければならない」とした上で、目標とする人材のタイプとして、「党が下した課題をいかなる条件でも決死貫徹する実践型人材、数字を重視し、すべてのことを科学技術に基づいて解決していく科学型人材、自分の頭で仕事を探し、限界に挑戦し、新たな着想を広げる創造型人材、集団と心と知恵を合わせて先端を突破していく集団主義精神の強い人材」をあげている。

 以上のような社説の内容、とりわけ最後の育てるべき人材のタイプについての記述からは、かねて主張されてきた「知識経済時代」等への対応としての人材育成の必要性といういわば積極的狙いだけではなく、既存幹部に対する強烈な不満が感じられる。その不満の持ち主は、いうまでもなく金正恩であろう。

 冒頭に述べたようなこのところの人材育成重視傾向は、先月の党中央委第2回全員会議における金正恩の発言が契機になっているようにみえる。なぜ、彼がこの時、やや唐突にそれを言い出したのか。推測であるが、その前に内閣から提出された経済計画草案への不満などを通じて、既存幹部全般に対して改めて能力不足、人材不足を痛感したためではないだろうか。