rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

2021年3月19日 評論「幹部の高い実力は実質的な成果の前提」

 

 標記評論は、幹部に対して自らの実力涵養のための努力を訴えるものである。

 まず、実力の重要性について、「人は、知っているだけ、能力があるだけ働くものである」「いかに党に忠実であろうとしても実力がなければ忠実であることができないというのが今日の厳然たる現実である」と強調する。そして、「創造力で裏付けられない忠実性と熱意は、主観的欲望に過ぎず、実践行動においていかなる成果も期待できない」とまできめつけている。

 その上で、能力向上の方法について、「基本は、政治的識見と豊富な知識を持つこと」と述べる。なお、ここで「政治的識見」とは、「わが党の路線と政策を粘り強く研究学習し、それを自分の骨肉とする」ことによって養われるものを意味する。

 また、「高い実力は、粘り強く情熱的な学習の果実である」として、能力向上のための努力を常に継続すべきことを訴える。

 加えて、幹部が備えるべき能力の重要な側面として、「事業を組織指揮する能力」を強調している。そのため、「実践過程を通じて実際に事業を組織指揮する能力を不断に練磨しなければならない」と訴える。

 最後に強調するのが「人民から学ぶ」ことで、「常に人民の中で虚心に学んでこそ、実力の塔を不断に高めていくことができ、大衆と心を合わせ高い成果を達成することができる」としている。

 先の市・郡党責任秘書講習会などにおいても、金正恩は、参加者の自己修養の重要性を強く訴えていた。経済各分野で従来の習慣・方法を打破し新たな革新の実現を目指す最近の動きの中で、幹部の能力問題(不足による弊害も含めて)は重要性を増していると考えられる。とりわけ、原料資源の供給など客観的条件が厳しい中で、生産現場の自助努力や創意工夫によってその打開を目指すとすれば、そこで中心的役割を果たす幹部の能力向上は、抽象的・一般的な課題ではなく、経済建設の成果を左右する、より喫緊の現実的課題となっているのかもしれない。評論のタイトルは、まさにそのような状況を物語るもののようにも思える。