rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

7月11日 論説「朝中親善関係は絶え間なく強化発展するであろう」

 

 標記論説は、「中朝友好援助相互条約」締結59周年に際してのものであり、「朝中親善は、共同の偉業のための聖なる闘争の中で結ばれた伝統的な親善関係である」とし、金日成金正日時代からの親善関係に言及した上で、それが金正恩習近平により一層深められていると主張する。

 そして、最後に、「我々は、中国党と政府が国の主権と安全、領土完整のために取るすべての措置を全面的に支持し、今後も社会主義偉業を守護するための闘争において中国人民といつでも共にいるであろう」として、中国への全面支持の姿勢を明確にしている。とりわけ、「領土完整」にまで言及したのは、かなり踏み込んだものといえ、注目される。

 ちなみに、昨年の7月11日の「労働新聞」には、上記条約締結58周年にちなむものとして、「日に日に発展する朝中親善」と題する情勢論解説が掲載されており、やはり金日成以来金正恩に至る伝統的友好が強調されているが、6月の習近平訪朝の直後であったにもかかわらず、前述のような中国の政策に対する全面的支持を示す文言は使われていない(そこで示されたのは、中国の独特の社会主義の成果について我がことのように喜んでいる旨の表現)。また、「情勢論解説」と「論説」を比較すると、やはり後者の方がやや重みのあるもののようにも思われる(ちなみに、今年の「論説」の筆者は、朝中親善協会委員長朴敬日(音訳)である)。

 昨今、北朝鮮の中国支持姿勢の顕著化が指摘されているが、今日の「論説」の内容及びその形式からも、そのような観察が間違いないものであることをうかがうことができる。

 問題は、そのような「対中接近」が対米関係にいかに影響するのかであろう。これだけ米中対立が鮮明化している中での対中接近であるから、普通に考えれば、対米関係にはマイナスの要素として作用すると見るべきかもしれないが(昨日の金与正談話をそのような視点から解釈することも可能であろう)、本当にそれでよいのか、現時点では、判断を留保しておきたい。