rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

8月12日 「朝鮮労働党中央委員会部署と本部家族世帯が銀波郡大清里人民を支援」

 

 標記記事は、金正恩が去る6日に洪水被害地を視察した際に行った指示に基づき、党中央委部署と本部家族世帯が準備した被災者向け救援物資(寝具類、食品など)を乗せた車両が10日午後、銀波郡に到着したことを報じるものである。

 記事によると、党中央の幹部である許哲萬(音訳、政治局委員候補・幹部部長)、蘆光燮(音訳、党歴史研究所長?)、呉日晶(党民防衛部長?)がこれら物資を郡・里の幹部、人民に引き渡し、慰労・激励したとされる。

 なお、別の記事によると、これら物資の輸送は激しい雨のために困難を極めたが、軍の「水陸両用車」を用いて現地に到着できたという。ただし、添付された写真に写っているのは、青色の大型トラックで、これが「水陸両用車」なのかは判然としない。

 いずれにせよ、同郡には、9日午前に「国務委員長予備糧穀」が到着しており、今次救援物資の到着はそれに続くものである。一連の記事が、こうしたことをとらえて金正恩の恩情を最大限強調していることはいうまでもない。敢えて言えば、それを強調するための救援物資送付とさえ考えたくなるほどである。

 更に、朴奉柱党副委員長が早速、銀波郡大清協同農場を現地了解したことも報じられている(訪問日などは言及無し)。朴奉柱については、黄海道延白地区の長雨期被害状況を現地了解したことが8日にも報じられており、高齢にもかかわらず、金正恩の現地指導のフォローアップを機敏にこなしていることがうかがわれる。

 一方、コロナ防疫対策に関しても、相変わらずの報道が続いており、本日は、「最大非常体制の要求どおり非常防疫事業をより隙間なく実施していこう」との共通題目の下、数件の記事が掲載されている。

 そのうち、「最も完璧に執行していくように 各地党組織において」と題する記事は、ある企業所の党組織が中央からの指示の伝達徹底に努め、その結果、「従業員だれもが中央非常防疫指揮部の指示をよく知り、非常防疫事業において思考と行動の一致性を保障する事業に積極的に奮い立っている」として、その取組みを称賛している。また、全国的に「画像指揮体系を構築したことに即して、幹部達が中央非常防疫指揮部の指示と各種政治事業資料、衛生宣伝資料を即時に接受し、徹底して具現するための組織政治事業も実質的に実施されている」ことを紹介している。これは、「画像指揮体系」という設備(ハード)の導入に伴い、それを実効的に機能させるような対応態勢(ソフト)を整備しつつあることを意味するといえる。

 以前にも指摘したかもしれないが、このところの過重とも思われるコロナ防疫対策への取組み徹底強調の背景には、コロナ対策を名目にして、中央の指示・指揮を文字通り末端にまで瞬時に浸透させ、それを徹底して実践させる(それも個人の生活の一挙手一投足に至る事柄まで)ことのできる体制を整備しようとの狙いがあるのではと思えてならない。