rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

2021年8月8日 党中央軍事委の指示により咸鏡南道党軍事委員会拡大会議を開催

 

 本日の「労働新聞」は、①党中央軍事委員会が8月5日、暴雨・洪水による被害復旧事業のため、咸鏡南道党軍事委員会拡大会議の緊急招集などを指示したことを報じる記事及び②同指示に基づき同日開催された咸鏡南道党軍事委員会拡大会議の開催状況を報じる記事を掲載した。

 このうち、①の記事は、党中央軍事委員会が上記拡大会議の招集のほか、「工兵部隊により被害地域の破壊された道路を至急復旧し、(咸鏡南)道に駐屯している人民軍部隊を咸鏡南道党軍事委員会の決定により動員させ、道の力量と協同して被害復旧を促進し終わらせる」ことを指示したことに加え、「総秘書同志」が「被害復旧用主要資材を国家予備分から解除し緊急保障(提供)するよう対策」し、「中央から財政物質的に咸鏡南道の被害復旧事業を強力に支援する」ことを命令したと報じている。

 なお、同記事は、通例、金正恩の動静を報じる際に用いられる「本社政治報道班」の名義によるものであり、「党中央軍事委の指示」とされている事柄についても、金正恩の命を受けて出されたものであることがうかがわれる。権限上の問題から、人民軍に関する内容は、軍事委員会として、それ以外の内容は総秘書として、指示・発令したのではないだろうか。

 次に、②の記事(こちらは朝鮮中央通信の記事)によると、同拡大会議には、道党軍事委員会委員に加え、(同道内の)市・郡党責任秘書、道級機関・主要工場・企業所の党・行政責任幹部、建設・設計部門の該当幹部、(同)道に駐屯する人民軍隊の軍政幹部が参加したとされる。

 会議では、まず中央軍事委員会の指示が伝達されるとともに、金正恩が「数次にわたり被害復旧と関連した方向と方途を具体的に明らかにして下さり、復旧に切実に必要な資材保障対策まで立てて下さったこと」や党幹部に対し「被害地域住民の生活保障に優先的な関心を払い、・・広範な群衆を党の周囲に一層鉄桶のように結集する」よう努めることを求めていることなどが紹介されたという。

 その上で、「該当地域に急派すべき建設力量編成と設計先行、資材輸送をはじめとした実務的な問題を討議し、道内の党・行政・安全・保衛機関責任幹部と人民軍隊軍政幹部で強力な被害復旧指揮組を組織」するとともに、「住民の生活を至急安着させるための緊急対策を立て、非常防疫事業をより強化し、農作物被害を最小化する問題を協議」し、「党創建記念日(10月10日)までに被害復旧を締めくくることについての決定を全員一致で採択した」と報じている。

 以上の報道に関し、まず気になるのは、なぜ5日になされたこうした動きが今日(8日)になって報じられたのかということである。普通ならば翌日、遅くとも翌々日に報じられてもいいように思うが、何か事情があるのであろうか。

 また、今回に限ったことではないかもしれないが、概して、金正恩の人民生活への配慮の深さを印象つけようとの意図を殊更強調した内容も気になる。