rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

2021年8月12日 咸鏡南道水害対策続報

 

 標記に関し、8月8日付け本ブログで紹介した5日の党中央軍事委員会による指示及びそれを受けた咸鏡南道党軍事委員会開催に続く主な動向を整理しておきたい(以下の地名等には音訳を含む)。

 まず、10日付けの「労働新聞」掲載の「党決定貫徹に奮い立った道党委員会のニュース 被害復旧のための視式政治事業深化 咸鏡南道党委員会において」と題する記事によると、同道党委員会は、5日に続き8日、「新興郡被害復旧現場において、道党軍事委員会拡大会議を再度開催」し、「被害状況を具体的に了解したのに基づき、被害が大きい新興郡の復旧事業を促進し終わらせるための問題を討議し、具体的な任務分担を行った」という。

 また、同日掲載の「洪水被害復旧戦闘を推進するための強力な対策講究 内閣と省、中央機関において」と題する記事によると、「内閣と省、中央機関幹部により洪水被害復旧中央指揮所が組織」され(日付は不明)、「農業省をはじめとする諸省機関では人民に食量と副食物、基礎食品などを保障する対策」を、「保健部門、都市経営部門では必要な医薬品を準備・送付し、飲料水の水質を徹底して保障し各種疾病を予防するための事業」のほか「数百名の医療関係者を現地に急派」し、「鉄道省ではセメントと建材をはじめとした復旧用資材を緊急輸送」する対策などを、それぞれ講じているとしている。

 更に、本日(12日)付けの「労働新聞」は、金徳訓総理が「咸鏡南道の工事被害復旧事業を現地了解」したことを報じる記事を掲載し、「栄光郡、新興郡、端川市、洪原郡の被害地域」を視察したことを伝えるとともに、現地で開催された評議会において、「洪水被害復旧中央指揮所の作戦と指揮を現場に接近させ、復旧事業において提起される問題を随時了解し解決する問題」などを討議したとしている。

 また、同総理は、これとあわせて、「5か年計画の初年度目標遂行において重要な部分を担っている興南肥料連合企業所、龍城機械連合企業所、2・8ビナロン連合企業所を訪れ、現行生産を正常化すること」などを指示したとされる。これら重要工場の稼働が大雨の影響により支障をきたしていることがかがえる。

 このほか、現地での復旧活動や被災住民の生活安定などに懸命な取り組みがなされていることが随時報道されていることはいうまでもない。

 しかし、昨日(11日)の朝鮮中央テレビのニュース報道では、今度は、咸鏡北道において大雨が降り、各地で道路が冠水するなどの状況が報じられており、今後、同道にも被害が拡大するおそれが考えられる。

 なお、余談だが、同ニュースの中では、昨日の本ブログで紹介した金英哲部長の米韓合同軍事演習を非難する談話が報じられた(ただし、同談話は、本日付けの「労働新聞」には掲載されていない。一方、金予正談話は、昨日同紙2面に掲載され、また一般のニュース番組とは別に独自に報じられており、別格の扱いといえる)。

 水害をはじめ国内での様々な困難が続く中で、こうして対外関係の緊張を改めて国内に広く周知したことは、今後の展開において、それなりの意味を有するものと考えるべきであろう。