rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

2021年1月20日 新たな経済管理方式(続)

 

 前項のブログをアップした直後に韓国・聯合通信の記事を通じて、本日の「労働新聞」にそれと関連する記事が掲載されていることを知った。

 それは、「新たな革新、大胆な創造、不断の前進を志向して奮い立った 責任を重く受け止め全力を尽くす 内閣経済指導機関幹部達と交わした話」と題する記事で、前項ブログで疑問を提示した点がある程度解明できる内容であるので、改めて紹介したい。

 同記事が冒頭に引用しているのは、梁承浩副総理の発言であるが、内容は概して総論的で、「祖国と人民の前に帯びた責任をいかなることがあっても全うしなければならないとの思想的覚悟さえ透徹していれば、できないことはないと思う」という言葉で結ばれている。

 それに続いて引用しているのが全現哲副総理の発言で、その中には次のような部分がある。「(党大会での報告で)現段階における我が党の経済戦略は整備戦略、補強戦略であることが重要に強調された。党の意図に即して経済事業体系と部門間の有機的連携を復旧整備し、自立的土台を固める事業を力強く推進するための研究を深く行っている。その過程で経済管理を改善する上で不必要な手続きと制度を整理し、人民経済すべての部門で非実利的で非効率的な要素を漏れなく探し出し正すための対策的問題が探求されている。」

 同記事は、更にこれに続けて、内閣局長趙勇徳(音訳)の発言を引用している。その中では、「工場、企業所、協同団体において社会主義企業責任管理制の要求に即して経営戦略をうまく立て、企業活動を主動的に創発的に行い生産を正常化する拡大発展させるようにするための事業を正しくおこなっていく。・・・基幹工業部門の諸単位を試験単位として定め、社会主義企業責任管理制を現実性をもって実施する事業を推進した。その過程で蓄積された経験を一般化し、国の全般的な経済部門が皆一緒に立ち上がるようにするための討議を集中的に行っている」ことが明らかにされている。同人の発言が最も具体的であり、前項ブログで紹介した金正恩の「結論」の中の言及とも極めて符合するものである。

 少なくとも、以上の記事から言えることは、金正恩の言及が社会主義企業責任管理制に関するものであって、これまでの一部企業所等における試験的実施の結果などを踏まえて、新たな方式の全国的適用に向けた検討が、金正恩の積極的お墨付きを得て、現在鋭意進行中であるということである。ただし、その改革がどの程度のものになるのかは、いまだ検討中であり未知数ということであろう。ちなみに、そういった研究に「内閣局長」が関与しているとすると、前項ブログで紹介した、「2014年当時、内閣第1局長」であった「全現哲」は、現在の副総理と同一人物である可能性が高いように思われる。

 いずれにせよ、彼らの検討は、(前掲聯合通信の記事でも指摘されていたところだが)一方で企業所等の主導性、創発性を促進(つまり権限を拡大)しつつ、一方で「部門間の有機的連携を復旧整備」するという、ある意味矛盾しかねない要求をいかに同時に満たすかという点が鍵になっているのであろう。