rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

2021年1月20日 新たな経済管理方式模索の動き

 

 第8回大会における金正恩の「結論」の中に標記を示唆する言及があった。気にはなっていたのだが、これまで触れるいとまがなかった。遅ればせながら、ここで検討してみたい。

 当該の発言は、「経済管理」を論じる中でのもので、「試験的に研究導入されている方法(複数)と経営管理、企業管理をうまく行っている単位の経験を結び付けることをはじめとして、我々の実情に符合しながらも最良化、最適化の効果を見ることができる経済管理方法を研究完成するための事業を積極的に推し進めなければなりません」というものである。

 これが具体的にどのような制度・方法を意味する、あるいは志向しているのか明確でないが、その直後に、「新たな5カ年計画期間、国家の統一的な指揮と管理の下に経済を動かす体系と秩序を復元し強化することに党的、国家的力を注がなければなりません」とあるので、少なくともそれほど抜本的な市場経済化を目指すものではないといえる。

 ただ、そうした限界性を有するにせよ、新たな経済管理方法の「研究完成」を積極的に推進するとの姿勢を示したことは着目されるべきであろう。

 それに関連して注目されるのは、先の党中央委員会第1回会議で、中央委員会の部長に準じる形で「経済政策室長」に任じられた全現哲(音訳・政治局候補委員)が、このたびの内閣改造で、副総理にも任命されたことである。党中央に「経済政策室」という部署が存在することが明らかにされたのはこれがはじめてのことであり(今次新設の可能性大)、また、同一人物が党中央委員会の部署の責任者と内閣の要職を兼任するのも極めて異例なことでもある。

 この党経済政策室の機能・権限などをうかがわせる具体的な根拠はいまだ示されていないが、全室長の副総理兼任ということから、党と内閣を結ぶ独特の役割を想定できる。一つの可能性としては、前述の「新たな経済管理方法」の研究などが含まれていることも考えられるのではないだろうか(希望的観測であるが)。いずれにせよ、同室ないし全現哲の今後の動向が注目される。

 ちなみに、全現哲の略歴は、聯合通信ホームページの個人データベースによると、2019年末の中央委第5回会議で中央委員候補に、今次第1回会議で中央委員及び政治局候補委員に選出されたことが示されているだけで、それ以前の経歴は示されていない。急速に頭角を現してきた人物といえる。なお、2014年に内閣事務局第1局長として同名の人物が把握されているが、同一人物であるかは判然としない。