rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

2021年3月27日 ミサイル発射をめぐり、李炳哲名義の談話を発表(3月28日記)

 

 25日のミサイル発射に対し、バイデン大統領が国連安保理決議違反などと非難したことを受け、朝鮮中央通信は、27日、李炳哲党(常務委員・)秘書名義の談話を発表した(ただし、「労働新聞」には掲載されず)。

 同談話は、今次ミサイル発射を「主権国家の堂々たる自衛権に属する行動」であると主張した上で、「(それに対し)米国の執権者が国連『決議』違反であると言いがかりをつけ、極度に体質化した対朝鮮敵対感をはばかることなくあらわしたことに対し、強い憂慮を表する」「米国大統領のこのような発言は、わが国家の自衛権に対する露骨的な侵害であり、挑発である」として、バイデン大統領の発言を正面から厳しく非難している。

 更に、「前後の計算もできず放言を引き続きまき散らす場合、米国は良からぬことに直面するかもしれない」と警告し、最後の一文で「我々は、引き続き最も徹底した圧倒的な軍事力を育てていくであろう」と軍事力強化を躊躇しない意向を示している。

 これは、バイデン政権発足後初めてのバイデン大統領に対する直接的な非難であり、これまでバイデン政権の対北朝鮮姿勢の見極めないし牽制を基調としていた対米姿勢が「対決」を基調とするものへと転換する屈折点としての意味を持つことになるのではないだろうか。

 もちろん、同談話を受けて、米国側が大いに反省し、今後は「放言」を慎むことにすれば、そうはならないであろうが、バイデン政権が文政権ではない以上、事態がそのように進むとは到底考えられない。

 ただ、それは、北朝鮮も想定した上での今次談話の発出であり、そういった対決なり対峙を当分続ける覚悟はできているのであろう。先般の習近平総書記との「口頭親書」交換も、そうした事態へのあらかじめの準備であったと考えられる。

  最大の注目点は、北朝鮮がこれを契機に更に行動をエスカレートさせ、得意の瀬戸際戦術を展開するのか、あるいは、従前の持久路線の延長線上で、まさに「やるべきこと」を粛々と進めるのか、という点である。私としては、現時点では、後者の可能性が高いと考えているが、とりわけ談話の最後の一文などを見ると、前者の可能性も捨てきれない。

 ところで、細かい点であるが、なぜ、今次談話は、これまで「対米担当」であった金予正ではなく、李炳哲の名義で出されたのであろうか。彼が今次ミサイル発射の責任者であったからと言ってしまえばそれまでだが、もう少し深い意味はないのか、一考の余地のある問題であろう。