rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

2021年3月29日 外務省国際機構局長の国連安保理での北ミサイル協議非難の談話を報道

 

 朝鮮中央通信は、3月29日、趙哲守(音訳)外務省国際機構局長の談話(3月28日付)を報じた(「労働新聞」には未掲載)。

 同談話は、まず、先の北朝鮮のミサイル発射に関し、「正々堂々たる自衛権の行使」であることを改めて主張した上で、国連安保理がそれに関する非公開会議を30日に開催することを決定したことに対し、「主権国家に対する無視であり、明白な二重基準」などと非難する。

 すなわち、米・英・仏などが様々な軍事活動、軍備拡充などの動きを行っていることに対しては問題視することなく、「われわれの自衛的措置に言い掛かりをつけていること自体が言語道断」であり、「主権国家の尊厳と自主権に対する重大な侵害、国連憲章に対する乱暴な違反と強く糾弾する」というのである。

 そして、結びの部分では、「われわれの自衛権を侵害しようとする試みは必ず相応の対応措置を誘発させるであろう」と警告している。

 このような談話の内容は、李炳鉄党秘書の談話とも軌を一にするもので、とりわけ、最後の部分が気になる。それは、仮に30日の安保理会議で北朝鮮を刺激するような結果が出れば、それに反発して行動をエスカレートさせるということを強く示唆するものであり、かつての核実験実施に至った経緯を想起させるものであるからである。

 もちろん、北朝鮮も、この表現がそのような連想を引き起こすであろうことを承知の上であえて用いているのであろう。ただ、その狙いが、安保理の結果が自国に不利なものにならないようにけん制するためであるのか、あるいは、エスカレートが既定路線になっていて、そのための道筋をつけるためのものであるのかについては、慎重に検討の必要があろう。

 現実的には、安保理の一角をなす中国、ロシアなどが後者の可能性も踏まえてか、北朝鮮への更なる圧力行使に極めて消極的な姿勢でとっているようであるから、安保理としては実質的な対応を打ち出すことができず、結局のところ、同談話は、「けん制効果」を発揮することで終わるのかもしれない。ただ、李炳哲談話に関するブログの中でも指摘したように、早晩、何らかの形で北朝鮮の行動にエスカレートの可能性があることは想定しておくべきと考える。