rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

2021年5月16日 金正恩「首領化」の論調を継続

 

 「労働新聞」が標記に関する論調を継続して掲載している。

 まず、5月15日には、「首領の恩徳を常に胸に深く刻もう」と題する評論をした。同評論は、前段で金正恩の「恩徳」を縷々詳説した上で、「首領の恩徳を受けたときには、涙を流し有難がるが、月日が経つにつれすっかり忘れてしまう」ような姿勢を「背恩忘徳」と戒め、「首領の恩徳は、言葉でだけ叫び、歌でだけ歌うのではなく、心臓に骨に刻まなければならない」として、実践活動において忠誠を発揮することを求める内容となっている。

 そして、改めて「総秘書同志の偉大な足跡を心臓に刻み、総秘書同志の思想と領導をよりしっかりと奉じていくことによって、我々が受けた天のような恩徳に忠誠で報いなければならない」と訴える。

 このような表現は、いわば金正恩と首領を重複させ、両者の一体化を図るもののように思える。

 また、16日には、「忠実性で輝くのが革命家の人生行路である」と題する論説を掲載している。同論説の特徴は、今日的課題への取り組みに関しても、金正恩の名前を挙げず、「首領」に対する忠実性の名の下で、奮闘を訴えている点にある。例えば、次の文がそれである。

 「今日のようにすべてが不足し困難なとき、座り込んで心配ばかりする憂国の士ではなく、党と国の苦悩と心配を一つでも減らすためにあれこれと努力する人間、自分が託された哨所と職場を高い実力と実績で守っていく人が首領に忠実な真の革命家である。」

 そして、結論においても、「すべての幹部と党員と勤労者は、首領に忠誠を尽くすことに真の生きがいがあるということを深く心に刻み、今日の一日一日を清らかな良心と義理で輝かしていかねばならない」と訴えている。

 このような論法は、既に「(今日の)首領=金正恩」という等式が前提になっているとしか考えられない。金正恩の「首領化」作業は急速に進んでいるとみるべきであろう。