rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

2021年5月15日 評論「我が国家第一主義時代を輝かせるための重要要求」

 

 標記評論は、「我が国家第一主義時代を輝かせるための重要要求」として、次の3点を提示している。

 第一は、「全人民が金正恩同志の周囲に固く結集し、党の思想貫徹戦、党政策擁護戦で党を奉じ、祖国を輝かせる」ことである。

 第二は、「自力更生の旗幟高く我々の主体的力、内的動力をより強化し、社会主義経済建設と文明建設において、画期的前進を成し遂げ、国の全般的国力を最高の高さにおいて打ち立てる」ことである。

 第三は、「我が国家の戦略的地位に相応するよう自主的대を確固として堅持しつつ、対外関係を全面的に拡大発展させていく」ことである(「대」は、台、帯、代などに翻訳可能だが、ここで何を意味するのかは不明」)。

 以上のうち、第一、第二の点は、概ね従来からの繰り返しであるので、以下、第三について詳述したい。そこでは、まず、北朝鮮の国際的地位について、「我が党と人民の決死的闘争によって、我が国家の対外的地位においては上昇変化が起き、我が共和国は、世界政治構図の中心において周辺情勢と国際政治の流れに大きな影響力を行使している」との認識を示す。

 その上で、「我々の自主権を尊重する世界のすべての国との親善団結を強化し、真正な国際的正義を実現」するとの原則ないし目標の下、「強国人民らしい自尊心と度胸(배짱)を持って、我が党の尊厳死守と国威堤高、国益守護のためすべての人民が力強く闘争していく」ことを訴えている。

 現在、北朝鮮がバイデン政権にいかに立ち向かうかの岐路に立っていることを考えたとき、以上のような表現から何をうかがうことができるだろうか。

 素直に解釈すると、核戦力の整備進展や米国との首脳会談実現などを背景として強い自信を抱き(悪く言えば「夜郎自大」に陥り)、「正義」「尊厳」「国威」などを重視する原則的ないし高圧的な外交姿勢を示したものといえよう。

 他方、ややうがった解釈としては、「我々の自主権を尊重するすべての国との親善団結」とか「国益守護」といった部分に着目し、米国が北朝鮮の自主権を尊重するとの姿勢さえ示せば、体制やイデオロギーの違いを超えて、「国益」に立脚した現実的・実用的な交渉が可能であるとの姿勢をうかがわせたものと見ることも可能であろう。

 同評論だけをもってしては、どちらであるとも即断しがたいが、現時点では、希望的観測や先入観を排し、双方の可能性を視野に入れてその動向を注視していくことが必要と考える。