rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

2023年10月29日 評論「強大な我が国家の尊厳は人民の自負心であり栄光である」

 

 標記評論は、本日の「労働新聞」の第1面に掲載されたもの。標題そのものが昨今の北朝鮮の宣伝方針を如実に反映している。

 まず冒頭では、北朝鮮の国威及びそれを受けての人々の心情について、「我が共和国は、世界が公認する尊厳高い自主国家、不敗の社会主義国家である。今、我が人民は、主体朝鮮の強大性と国力に対する別人にはない矜持と自負心を帯びている」と主張している。

 本論では、そうした「強大な我が国家の尊厳に対するすべての人民の限りない自負心と栄光」の源泉ないし基礎として、①「国力中の第一国力である政治思想的威力」、②「世界最強の自衛的国防力、戦略的力」、③「自立経済の無尽強力な底力と発展潜在力」をあげ、それぞれを詳細に解説している。

 このうち①については、「物理的力には限界があるが、政治思想的威力には限界がない。尊厳高い我が国家の強大さは、何か特別な力にあるのではなく、党の路線と政策を絶対支持し決死貫徹していく我が人民の高い革命的熱意と創造的で現実的な努力が込められた一つ一つの創造物と事業成果によって裏付けられている」などと説明している。②,③についての紹介は割愛するが、②が現実のものとして論じられている一方、③には「潜在力」が含まれることだけ指摘しておきたい。

 評論は、こうした議論を踏まえて最後に、「今日、我が祖国が高い尊厳と無尽強力な国力を万邦に誇示している根本要因は、偉大な領導者を高く奉じていることにある」、すなわち、「今日、民族史上最上の境地に立った強大な我が国家の国力と地位は、敬愛する金正恩同志の非凡な叡智と卓越した領導がもたらした高貴な結実である」と主張している。

 以上の主張の論理構造を整理すると、①金正恩の非凡な叡智と卓越した領導→②政治思想的団結、自衛的国防力、経済的潜在力→③国家の尊厳発揮→④人民の自負心、栄光の実現、という構図になろう。

その含意は、そうした「自負心、栄光」を抱かしめてくれた金正恩への報恩(忠誠発揮)の必要性であり、そして、そうした忠誠心に基づく人々の日々の奮闘が②の要素を一層確かなものにし(とりわけ、経済的潜在力が実際の成果として具現化される)、その結果が③を一層確実なものにしていく、という好循環を成し遂げようとの訴えであろう。現実は、この循環のどこかに、うまく繋がらない問題が存在するのであろう。