rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

2023年9月21日 社説「絶世偉人を高く奉じた強国人民の栄光と矜持を抱いてより大きな勝利に向け力強く進んでいこう」

 

 標記社説は、金正恩の今次訪ロ成果を称賛した上で、そうした成果をもたらした同人への忠誠発揮を改めて訴えるものである。

 まず、今次訪ロの成果に関しては、「朝ロ親善と協調、善隣友好関係を新たな高い段階へとより一層強化発展させ、反帝国主義偉業遂行のための正義の闘争を力強く鼓舞推進された」と評価するとともに、その反響について、「(同)訪問の日々、地球上は、世界的な政治指導者の重大で意味のある動向により強く震動し、この地(北朝鮮国内)では首領崇拝の熱気がより熱く噴出した」と主張している。そして、そうした訪問の結果について、「(同)訪問を通じて、世界政治情勢の流れを確固として主導していく主体朝鮮の国際的地位と影響力が全世界にもう一度力強く誇示」されたと自賛している。

 その上で、「首領が偉大であれば国も人民も強大な国、尊厳高い人民として栄光を轟かすことになる」、「敬愛する総秘書同志を高く奉じた栄光と矜持は、必勝の信念を百倍にしてくれ、すべての人民を全面的国家発展の新地平に向けた闘争へと力強く呼び起こす原動力である」などと主張して、「強国人民」としての誇りとそれをもたらした金正恩に対する忠誠心を梃子として、日々の活動に献身するよう訴えている。具体的には、「強国人民であるとの栄誉を深く刻み百倍、千倍で奮発し奮闘し、国家経済発展5か年計画完遂の決定的担保を準備しなければならない」のである。

 以上が同社説の基本的論旨であり、それが今次訪ロ報道の国内的狙いを示していると考えられる。そして、それらは、概ね想定内の主張といえるが、ここで注目されるのは、そうした献身の具体的方法論の一つとして、「享有の権利よりも公民的義務を先に置いて、国の大きな荷物(負担)を一つでも軽くするため苦心し奮闘しなければならない」と訴えていることである。こうした主張は、北朝鮮において「人民生活重視」路線の下、それなりに当局からの住民向け物資・サービスの供与が拡大する中でも、それを当然視し、一層の供与を期待・要求する風潮が生じていることをうかがわすものと考えられる。

 なお、本日の「労働新聞」は、同社説に加えて、「我々の国威、我々の尊厳」と題する政論を第2面の全面を費やして掲載している。同政論もまた、金正恩の訪ロを題材として、その動静報道に接した北朝鮮住民が「興奮した心情を禁じることができず」、それぞれの生産現場などで奮闘し功績を上げた例などを紹介した上で、「偉大な太陽(=金正恩)を奉じ、その尊厳と威容が空に届く矜持高い我が人民、思想においても領導においても徳望においても最高であられる天下第一偉人を高く奉じて世紀の強国として輝く偉大な我が国家」を自賛するなど、社説と通底する内容となっている。

 こうした社説、政論の主張は、客観的に見ると信条告白の域を超えるものではなく、果たしてどれだけの説得力があるのか疑問を感じざるをえないが、既に同様の心情を形成・保持する人々の間では、一定の共鳴効果を生じているのかもしれない。その辺は、想像するしかないのが実情である。